愛とは、全人生をかけてアイドルにチェスを教えること。

フリルドスクエアと行く、奥深いチェスの旅。

イメージと読みの人生観

 

 本誌2回目の企画、「イメージと読みの人生観」をお送りする。内容は、クセモノ揃いのこの事務所でも一際の曲者たちの読みの能力と独特のチェス観に迫ろうとする、有名企画のパロディである。

 今回は司会役の喜多見柚ほか、ハロウィン・イベントに引っ張りだこの安部菜々をはじめ、綾瀬穂乃香、神崎蘭子鷺沢文香、八神マキノに参加してもらった。1つの局面図を見て、6人のアイドルにそれぞれの感想や読み筋を語ってもらう。同じテーマ図を見て、同じことを言うのは分析に信頼が持てるし、各人がてんで違うことを言い出すのもまた、チェスの深淵を肌に感じられるようで一興である。

 今回のテーマ図は3つ。3名が持ち寄ったテーマ図について、各々が勝手気ままに意見を戦わせる。ひとつめは八神持参の、超最近の形。ふたつめは、つい先日話に出た、聖ジョージ防御をどう見るか。そして最後に、事務所の中でも最もホットでクールなあの形について、識者は述べる――。

 

テーマ図①

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(Figure.1 : 1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 e6 5.g3)

 

テーマ図②

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(Fig.2 : 1. e4 a6)

 

テーマ図③

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(Fig.3 : 1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Nc3 Nf6 4. Nxe5)

 

喜多見柚「じゃ、始めまーす。『イメージと読みの人生観』、2回目ですー」

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安部菜々「お願いしまーす、キャハ☆」

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「アタシと菜々さん、蘭子ちゃんが初参加で、後のみんなは2回目だネ!よろしくお願いしますー」

 

鷺沢文香「よろしくお願いします」

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神崎蘭子「いざ、魂を奮い立たせん!(宜しくお願いします!)」

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「じゃ、早速始めていきましょ。まずはテーマ図①、これはマキノさんが持ってきてくれたヤツだネ!」

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(再掲Fig.1)

八神マキノ「えぇ。1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 e6とセミ・スラヴになったときに、5. g3と突くラインなのだけど……これ、この1週間で複数回、世界の公式戦で目にする機会があって……」

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文香「今週は……チゴリン・メモリアルにユーロピアン・チームが男女あって、そうですか、FIDE公式戦目白押しの週ですか……」

 

菜々「ここで、5. g3ですか……?と、いうことは5. ... Nbd76. Bg2とフィアンケットを組むのでしょうか……」

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(Fig.1.1 : Fig.1~5. ... Nbd7 6. Bg2)

マキノ「そうね」

 

文香「セミ・スラヴといえばつい最近、穂乃香さんが自分の講座で取り上げられてましたね」

 

綾瀬穂乃香「はい、これですね。あの講座では、5. e3Bg5に絞りましたが、あの時点では最も多く指されている分かれでした」

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菜々「現代チェスの変化は日進月歩ですねぇ……」

 

穂乃香「アンチ・メランで5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd67. g4と突くShirov-Shabalov Gambitというのはありましたけどこれはなかなか……なるほど?」

 

「セミ・スラヴに対する白って、バランスを保ちながら0-0を狙ってBd3と出て、ここからBf5と好位置に据え付けたいなっていうのがオープニングの感覚だよネ。Qc2Bd3でバッテリーも組めるし。この黒マスビショップの活用より早く、フィアンケットを急ぐんだネ」

 

マキノ「だから、Bd3と出た時点で黒からdcと取ってぶつけて、以下Bxc4 b5まで進むことが多いのだけど……」

 

 

穂乃香「ちょっと掘ってみましょうか?局面ここで……候補手は、安部さんが推す5. ... Nbd7の他には?」

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(再再掲Fig.1)

文香5. ... Bb4とピンするのはどうでしょうか」

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(Fig.1.2 : Fig.1~5. ... Bb4)

菜々「あー」

 

蘭子「黒の操り手は、時が満ちたらb6と突いてみたいものよ……(どこかのタイミングで、黒はb6と入れてみたいです~)」

 

マキノ「そうね。白がg3としてフィアンケットを見せてる以上、黒も同じくフィアンケットを組んで対抗したいのは棋理にそぐうわ」

 

菜々「とすると、6. Bg2には0-0ですか。そして7. 0-0 Nbd7、ここで8. Qb3/Qd3とありますが……8. Qd3ならここでb6と突く感じですかね……あれれ?こうすると、2、3年ほど前に見た景色ですよ?」

 

マキノ「ちなみに8. Qd3はドロー濃厚になるから、このラインではビショップに当てる8. Qb3が推奨ね」

 

文香6. ... Ne4はどうでしょう?ピンを活かして速攻する……あぁ、7. Qc2Qa5と戦力を足しても、8. Bd2と数を受けに8. ... Nxd2 9. Nxd2で後が続きませんか。これは白がかなり有利そうです」

 

菜々「それは15年くらい前のラインじゃないですか?結局、7. Qc2に代えてQb3でも、0-0でも受け切れる、ということで廃れました……って聞いたことがあります!」

 

文香「では、黒の5手目Bb4は黒が勝ちにくい、と……」

 

蘭子5. ... dcは?」

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(Fig.1.3 : Fig.1~5. ... dc)

 

「これは6. Bg2に、6. ... b57. Ne5 Nd5 8. e4 Nxc3と進むとちょっと白が勝ちやすそうではあるけど」

 

穂乃香6. ... Nbd7もありそうですね。7. 0-0 Be7 8. e4 0-0で、これなら黒としては形勢を損なわず推移できそうです」

 

マキノ「この古い形が、何を持ってハロウィンの時期に甦ったのか、少し気になるわ……私としては、5. g3 Nbd7 6. Bg2 dc 7. 0-0 Be7 8. e4 0-0の瞬間に9. Bf4と出るラインが白として気になるけど」

 

文香「……なるほど、9. ... b5 10. d5 cd 11. ed Nxd5 12. Nxd5 ed 13. Qxd5のねらいですね」

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(Fig.1.1.1 マキノと文香の読み筋)

 

マキノ「こうなれば黒はドロー狙いしかなさそうね。これが私たちの現状の結論かしら?」

 

 

「じゃあ、お次は~……これかな?これは?」

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(再掲Fig.2)

蘭子「聖ゲオルギウスの防御陣、我が図譜よ!(はい、私です~)」

 

穂乃香「これは、聖ジョージの防御ですか……どうしてこれを?」

 

蘭子「書の女神の言霊に感化されたのよ(この前、文香さんがおっしゃてたので~)」

 

文香「あぁ……これ、ですね」

菜々「プロデューサーさん、好きですよね。蘭子ちゃんも、名前的に好きそうですけど」

 

蘭子「うむ、我が友の教えを乞いたく……!(えぇ、ぜひこの機に教えて貰いたくて!)」

 

文香1. e4 a6 2. d4 b5と進んで、白からはここで3. Nf3/Bd3の選択があるでしょうか」

 

穂乃香3. Nf3だと以下3. ... Bb7 4. Bd3 e6 5. 0-0 c5 6. c3 Nf6となるのでしょうね。6. dcだと手順に6. ... Bxc5と出られますので。どうせ3. Bd3でも、白はまっしぐらにキャスリングを目指すので大差ないと思います」

 

「まぁ、黒が勝ちやすいってわけでもないよネ。白はセンターをコントロールし、キャスリングにいち早く入って、あとはアドバンテージを狙っていく。対して黒はクイーンサイドの拠点と、速攻で作ったフィアンケットを軸にあの手この手で技をかけていく、ってカンジなのかな」

 

蘭子「つまり、これは盾に仮託された矛……!(防御、なのに白が受ける進行になるんですね!面白いです~)」

 

マキノ「まぁ、黒が受け一辺倒になることはないけれど……優秀、とは言い難いのかしら?これを相当に指し熟せる力があるなら、他のオープニングで白を相手にした方が勝ちやすいでしょうに」

 

文香「あとは好みの問題ですね。このくらいでいいでしょうか?」

 

 「最後はこれだネ!」

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(再掲Fig.3)

菜々「はーい、これナナのです!」

 

文香「ハロウィン・ギャンビットですね。今、ウチの事務所では最も注目されているといっても、過言ではないでしょう……」

 

蘭子「こ、これは……」

 

穂乃香「蘭子ちゃんは、よく戦いましたね」

 

「ネ、熱い、いいゲームだったよネ。そういえば、この形も穂乃香ちゃんの講座でちょっと触れてたよネ?」

 

穂乃香「これ、でしょうか」

マキノ「蘭子のトランスポーズしてスコッチ・ゲームにするのは面白かったわ」

 

蘭子「えへへ~」

 

4. Nxe5 Nxe5 5. d4の瞬間、黒は5. ... Nc6Ng6と逃げ場があるけど、どっちのがいいのカナ。Ng6のが位置取りは良さそうだけど、その後がすごく神経使いそう。だから、柚ならNg6をやるんだけどネ!」

 

文香「これはNg6でしょうね。確かに、スペースアドはありますが、この後も白の技を皮一枚で躱しつづける展開になりそうです。受け切って反攻できれば黒が勝ちやすいでしょうが……以下6. e5 Ng8ですが……ここで6. ... Bb4という手も面白そうです」

 

菜々「うう……こうなるともう、トリック返しの化かし合いですよ!」

 

穂乃香「見ている分には楽しそうですが……」

 

マキノ6. e5 Ng87. Bc4とか、Qe2とか……手番を活かした陣形整備でしょうけど、これはちょっと私はやる気がしないわね」

 

文香「まぁ、勝ち星の掛かった試合でこれを同格以上に投入するのは、考えもしない気がします……それは、自分が黒を持ってよくできる自信から来るのでしょうけれど……」

 

蘭子「私もまだまだ未熟であった……」

 

穂乃香「神崎さんは、将来有望ですから。今回のゲームも、とてもよかったです」

 

菜々「はらはらしましたよ~。見ていて、楽しかったです。そういう意味では、とても楽しいオープニングですよね!」

 

文香「えぇ。チェスは楽しくやるものですから」

 

マキノ「……でも、『チェスは楽しくやるべきだ』っていうのはわかるわね。極論を言えば、ホモ・サピエンスという種が繁栄するのにチェスは必要ないし、太陽系的には私たちがどのようなボードゲームをしているかなんて、瑣事でしょう?なら、私たちは自分の為にチェスを愉しむべきだと思うの。私にとっては、厖大なデータを集め上げて、最善の一手を希求したい、それが楽しさだから」

 

菜々「マキノちゃんも、そうなんですね。そうです、楽しむことが、ハロウィン・コードで、チェス・コードなんです。キャハッ☆」

 

「おっ、菜々サンが自分の出演してたイベントに掛けて締めたところで……今日はおわろっか!見てくれた人、出てくれた人、ありがとうございました。またネ!」

 

(続く)