愛とは、全人生をかけてアイドルにチェスを教えること。

フリルドスクエアと行く、奥深いチェスの旅。

喜多見柚の名局好局つまみ食い[『イモータル・ゲーム』ブライアン・ギャンビット / Adolf Anderssen v.s. Lionel Kieseritzky, 1851, London]

 

 やっほーみなさん、柚だよ、ひさしぶり!

f:id:rikkaranko:20170910225222j:plain

 なんだか天気が不安定だねー、すごい暑い日もあれば、いきなり雨に降られたり……。でも、いいこと、一日ひとつ見つけられたらそれでいいかなって、へへっ♪

 

 今日紹介するのは、1851年のゲームだから……今からえーと……だいぶ昔!

 でも色褪せたかっていうと、とんでもない!『不朽のゲーム』、イモータル・ゲームと呼ばれてるゲームなんだ。柚が以前、アンデルセンの『エヴァーグリーン・ゲーム』を紹介したのを、みんな覚えててくれてるカナ?今日はそのアンデルセンの、もうひとつのm@sterpieceを紹介するよ~っ!

 

 白番がアドルフ・アンデルセン。数学者にしてチェス棋士っていう、まるで論理的に頭を使うために生まれて来たみたいな人だ~って話を前のときにしたよネ。

 対する黒番は、ライオネル・キーゼリッキーだネ。そ、キングズ・ギャンビット・アクセプテッド、通称KGAのラインの中にキーゼリッキー・ギャンビットっていうのがあったよネ!これこれ!これも柚が紹介したんだった!彼も、このイモータル・ゲームにキーゼリッキー・ギャンビットと、チェスの歴史において重要な役目を果たした人だよ!

 

 このゲームは、ロマンチック・チェスの代表的存在、ともいわれているんだよネ。ロマンチック・チェスっていうのは、別に恋愛映画みたいとかそーゆーイミじゃなくてネ!ロマン時代の……ってことらしいけど、チェスの歴史の流れはよくわかんない!から、これは今度文香サンとか奏サンに解説してもらおう!とにかく、意味としては『短期決戦的な殴り合い重視』、みたいなカンジ……合ってるカナ?ハイパーモダンとか、そういうチェスより大分前の、戦略を練って持久戦的に指すんじゃなくて、どんどんピース交換して最後にキングを乱戦で仕留めたら勝ち!みたいなゲームを指していうみたい!ちょうど、アンデルセンが活躍した時代がそこに当たってるみたいで、キングズ・ギャンビットやジオッコ・ピアノみたいな華々しい乱戦型が多くて、逆にクイーンズ・ゲームが全然指されなかったんだって。

f:id:rikkaranko:20170911233524p:plain

(Figure.1 : 1. e4 e5 2. f4 まで)

 このゲームも、キングズ・ギャンビットだネ!アンデルセンが早くも、自分のキングサイドを弱めるリスクを犯しながら仕掛けるー!

f:id:rikkaranko:20170911233923p:plain

(Fig.2 : 2. ... ef まで)

 黒は堂々、このギャンビットを受けたーっ!これで戦型はKGAに決まりだネ。

f:id:rikkaranko:20170911234204p:plain

(Fig.3 :  3. Bc4 Qh4+ 4. Kf1 b5 まで)

 3手目Bc4は今では主流じゃないカナ?感触的にはNf3って出るのが多い気がする局面。黒から3. ... Qh4+とチェックを掛けて、白のキャスリングの権利を奪ったネ。

 この速攻チェックで黒が良いような気もするカモだけど、これは後々白がNf3と跳ね出す手が直截に当たるので、どうせ追い払えるからダイジョーブ!ま、さっきも言ったけど3. Nf3はこのクイーンの進軍を阻む手だから、こっちの方が穏便カナって感じはするなー?

 ここでちょっと有利を稼いだから……って黒は続く4手目でb5と白マスビショップの活用を図ったところ!いきなりポーン損するからちょっともったいない気もするケド……こーゆー手は実際指されてたりもするから難しいトコロ!たとえば、1993年のナイジェル・ショートv.s.ガルリ・カスパロフでは、

f:id:rikkaranko:20170912000500p:plain

(c.f. Fig.3.1 Short v.s. Kasparov : 1. e4 e5 2. f4 ef 3. Bc4 Qh4 4. Kf1 b5以下、5. Bxb5 Nf6 6. Nf3 Qh5 7. Nc3 g5 8. d4 Bb7 9. h4 Rg8 10. Kg1 gh 11. Rxh4 Qg6 12. Qe2 Nxe4 13. Rxf4 f5 14. Nh4 Qg3 15. Nxe4 1-0)

 っていうゲームがあったネ!このKGA~3. Bc4 Qh4+ 4. Kf1 b5と突いたところをブライアン・ギャンビットって呼ぶんだって!

 ブライアン・ギャンビットはキーゼリッキーの他だと、あのポール・モーフィが白黒両方持って指してるカナ。ま、KGAは乱戦上等って形だからこの位はいいのかも。

f:id:rikkaranko:20170912001127p:plain

(Fig.4 :  5. Bxb5 Nf6 6. Nf3 Qh6 7. d3 Nh5 8. Nh4 Qg5 9. Nf5 c6 10. g4! Nf6 まで)

 白マスビショップを攻める黒9手目のc6に対して、これを逃げずに攻め合う10. g4の鬼手が炸裂!相手の大駒を責めるムーヴ、しかも自分の玉頭で、これは華々しいネ~。ちなみに、後世の研究では、ここでは代えて10. Ba4のがいい、って主張もあるみたい。ま、名局ほど後代のマスターたちが挙って研究するから、色んな悪手や疑問手が見つかるんだよネ。時代やプレイヤーを考えての鑑賞と、教材としての分析はまた別、ってことだネ!

f:id:rikkaranko:20170912002223p:plain

(Fig.5 :  11. Rg1! cb 12. h4 Qg6 13. h5 Qg5 14. Qf3 Ng8 15. Bxf4 Qf6 16. Nc3 Bc5 17. Nd5 Qxb2 まで)

 ビショップを逃げず11. Rg1が先を見通した好手で、ここから3手でアンデルセンは黒陣を押し返し抑え込むことに成功!こう見ると、黒はピース得ながら、圧倒的に効率の面で立ち遅れてるよネ。ピースがほとんど初形のままだモン。これはアンデルセンの凄さがわかってもらえるんじゃないカナ……!

 クイーンに最長ダイアゴナルを走らせキーゼリッキーも猛追するけれど、果たして。

f:id:rikkaranko:20170912002905p:plain

(Fig.6 : 18. Bd6 Bxg1 19. e5 Qxa1+ 20. Ke2 Na6 まで)

 19. e5がすべてを読み切った手で、20手目のこの局面から3手メイトなんだよネ。読み切れるカナ?劇的な詰め筋!

 ちなみに、18. Bd6 Qxa1+ 19. Ke2 Bxg1 20. e5 Na6って伝えてる資料もあるみたい。とにかく、ルークをバシバシ見捨てて鬼気迫る猛攻、ってカンジ!

f:id:rikkaranko:20170912003336p:plain

(Fig.7 : 21. Nxg7+ Kd8 22. Qf6+ Nxf6 23. Be7#)

  最後は、ルークどころかクイーンまで!すべての大駒を捨てての鮮やかな収束……!アンデルセンの類稀な腕力とコンビネーションが発揮された、名局中の名局だよネ。この『イモータル・ゲーム』、チェスの文学の中でも比類なき傑作って呼ばれてるんだって。なんども並べてみて欲しいナ!

 

 締めの言葉は……どうしようカナ。ん、これにしよ!

――運に頼る人はトランプかルーレットをやった方がいい。チェスは全く違う何かである。

 これはペトロシアンの言葉。人間どうしの勝負では、指されるのを待っているミスがそこかしこにあって、体調だとか、心理状態だとか、そういう兼ね合いで純粋な読み以外のものが入り込んじゃうことはあるけれど、それでもやっぱり、運じゃないんだよネ。そんなことを想う秋の夜長、喜多見柚でした!

 

(続く)