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第1回Blitzトーナメント第3回戦第1ゲーム[北条加蓮 vs 喜多見柚](解説・速水奏 / 聞き手・桃井あずき)

 

桃井あずき「こんばんはー!今夜は、ブリッツ・トーナメントの第3回戦から、第1ゲームの北条vs喜多見戦の解説をお届け!聞き手はあずきが、解説には速水奏さんをお迎えしてるよーっ」

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速水奏「ふふ、今日はよろしくね」

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あずき「今日のゲームは、『シンデレラを探して』第2話の最終盤、北条加蓮vs渋谷凛のタイトル戦の元ネタになったゲームだよーっ」

 

 

奏「あの衝撃的なシーンね……」

 

あずき「ところで、奏さんは2回戦2ゲームで杏さんとのゲームを制して、3回戦を決めたんですよね!いいゲームでした!」

 

奏「ありがと。ふふ、ヘッジホッグのやつね。まぁ、次当たるのはフレデリカだから……私らしく頑張るわ」

 

あずき「そういえば、2回戦はまだ2ゲーム残っているのに、もう第3ゲームなんですね。あずきとアナスタシアさんとか、まだだなぁって」

 

奏「柚ちゃんが2回戦シードでもう対戦が決まっているからじゃないかしら?」

 

あずき「なるほど。先に消化できるカードを消化しておくと」

 

奏「そういうこと。今日紹介するゲームはなかなか凄いわね。まぁ、3回戦まで来るともう相当な使い手しか残ってない、ということなのかしら……」

 

あずき「いってみよーっ」

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(Figure.1 : 1. d4 f5 まで)

あずき「ダッチ・ディフェンスですか。加蓮さんの1. d4は初めて見ました」

 

奏「加蓮なりに、柚ちゃんを警戒してのことでしょうね。1. e4ゲームで直近10ゲームの柚ちゃんの戦績が9割あるのも大きいのかもしれないわ」

 

あずき「まぁ、ブリッツに関してはオープンゲームじゃない方が指しやすかったりもしますよね」

 

奏「慣れていれば、そうかもしれないわね」

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(Fig.2 : 2. Bg5 h6 3. Bh4 d6 4. e4 Qd7 まで) 

あずき「随分早いビショップ出ですね……?」

 

奏「2. Bg5ホップトン・アタックね。対する2. ... h6は面白い構想だけど、これは加蓮が最近面白い研究を打ち出したモーフィ・ディフェンスのa6を突くのとはわけが違うわ。キングサイドでh6~g5とするのは黒としては0-0とショートキャスリングしにくくなるし、白からすればルークを潜って終盤キングサイドが食い荒らし放題になる恐れがあるもの」

 

あずき「なるほど。じゃあここでもう白が指しやすいと?」

 

奏「んー、指しやすいとは何を持って言うのか難しいところがあるのだけれど。少し形勢に余裕があるということは、それだけ思い切った技を掛けに行き易い。そう云う点では指しやすさがあるかもしれない」

 

あずき「むむむ、なるほど……4. e4はなぜ黒は4. ... feと取り返さなかったのでしょう?」

 

奏「それは5. Qh5+でゲームが終わるわ。5. ...Kd7 6. Qg4+ Kc6 7. Qxe4+と追われていきなり黒は気息奄々よ」

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(Fig.3 : 5. ef Qxf5 6. Bd3 Qf7 7. Nf3 g5 まで)

あずき「この辺りで、黒はクイーンサイドにキャスリングしようという意志を固めてますね」

 

奏「そうね。じゃないと7. ... g5は突けないでしょう。そうでなくちゃ、まるでピノキオの鼻だわ」

 

あずき「……?(伸び過ぎ、ってことかな?)」

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(Fig.4 : 8. Bg3 Nc6 9. 0-0 Bd7 10. c4 e6 11. Nc3 0-0-0 まで)

あずき「来ました、ロングサイド・キャスリング!」

 

奏「10. c4~11. Nc3は細かいテクニックだわ。序盤にセンターコントロールの一助とできるなら、左のナイトはたとえ歩越しの桂馬の形でも速攻で繰り出すべきなのよ。でも、そうじゃないなら、八方桂とはいえナイトがポーンに狙われやすいのも、将棋と一緒。だから、Nc3を跳ねる前にc4と入れておくだけで、攻撃に弾みがつくだけじゃなく、ナイトを狙って黒から綾をつける筋も消しているの」

 

あずき「……ホップトン・アタック、強くないです?」

 

奏「強いと思うわよ。しっかり研究していれば、作戦勝ちだって目じゃないわ」

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(Fig.5 : 12. c5 Nf6 13. Rc1 dc 14. Qb3 Kb8 15. Ne4 Nd5 まで)

あずき「これは面白い形ですね。ナイトが斜めに並ぶなんて!今度こんなプロブレムを作ってみようかなーっ」

 

奏「そうね。そしてこの形、どのナイトが跳んでも斬り合いが始まりかねない一触即発よ」

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(Fig.6 : 16. Nxc5 Bxc5 17. Rxc5 Qe7 18. Ne5 Nxe5 19. Bxe5 Rhf8 20. Rfc1 Qf7 まで)

あずき「段々、見覚えのある局面が近づいてきましたねーっ」

 

奏「そうね。19. ... Rhf8~20. Rfc1は同じルークの活用だけど、意味がまるで違う。20. Rfc1とルークバッテリーを組んだ手に対しては、Rxc7を防ぐ手だてが黒にはないわ。ここはもう、投げ時すら考えるくらいに黒は追い込まれている」

 

あずき「負けじと黒も20. ... Qf7とバッテリーを組みますが、これはちょっと遅いなぁ」

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(Fig.7 : 21. f3 Ka8 22. Rxc7 Rb8 23. Bg6 Qe7 まで)

あずき「動画のシーンは丁度この辺りだねーっ、22. Rxc7から24手目までかな?」

 

奏「そうね。観ての通り、作戦勝ちから白の圧勝に近い、会心譜だと思うわ。だからこそ、24手目が指せなかった北条加蓮というのに、意味があるのよね……」

 

あずき「23手目の場面では、黒はQf7と回った1手すら咎められてますね……」

 

奏「これは加蓮が強すぎるわ」

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(Fig.8 : 24. Be4 Rfd8 25. Bxd5 ed 26. Qxd5 Qe6 27. Qa5 Re8 28. h3 a6 29. b3 Rbc8 30. b4 Rxc7 31. Rxc7 Bb5 まで)

あずき「ルーク・エクスチェンジから31. ... Bb5は黒も考えましたね。極めてテクニカルな感じ」

 

奏「そうね。これでクイーンを縛ろうってことね。……まぁ、打開の権利は絶対勝勢の白にあるとはいえ、一応スリーフォールド・レピテイションの可能性も生まれるし」

 

あずき「こう見ると、24手目はホントに決め手の一手なんですねーっ、ここで優勢から勝勢に切り替わる様な……」

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(Fig.9 : 32. Qa3 Bc6 33. Qa5 Qd5 34. Qc5 Qxc5 35. bc a5 まで)

あずき「34. Qc5~35. bcのあたりは、魔法の様な手順ですねーっ」

 

奏「これで、クイーン交換をすれば黒は土俵際の踏ん張りが利かなくなる。さらに、パスポーンをbファイルからcファイルへとワープさせて、白に不満は一切ない。えげつないほど筋に入っているわね……」

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(Fig.10 : 36. Rh7 Re6 37. Bc7 Ka7 38. Bxa5 Ka6 39. Bc7 Kb5 40. a3 Ka4 41. Bd6 Kxa3 42. Bf8 Kb3 43. Bxh6 Kc4 44. Bxg5 Kxd4 45. Be7 1-0)

あずき「ここで柚ちゃんが投了、と。ふたりとも、お疲れ様でしたーっ」

 

奏「投了図からは即詰みがあるわけじゃないけれど……ないわよね?加蓮の棋譜だからわからなくなってきたわ……取り敢えずいえるのは、この局面はツークツワンクね」

 

あずき「どんな手を指しても、指した方が悪くなる局面、ってことですねーっ」

 

奏「そう。ここまで来ると黒は、毒を呑まされたように、自分の力で自分を殺していくしかないのよ」

 

あずき「というわけで、本譜は加蓮さんの会心譜となりましたーっ。勝った加蓮さんは、準決勝で速水奏vs宮本フレデリカの勝者と対戦……って、奏さん、どう思います?」

 

奏「そうね……まずはフレデリカとの対戦のことだけ、考えておこうかしら。他のことを考えながら戦う私に勝ちを譲ってくれるほど、フレデリカは甘い女じゃないのよ」

 

あずき「そうですね!応援してます!」

 

奏「あら、貴女もそろそろじゃない?アナスタシア戦」

 

あずき「そうなんです……でも、胸を借りるとかじゃなくて、勝ちに行きますよーっ」

 

奏「ふふ、その意気よ。勝負事は、そうでなくちゃ」

 

あずき「そうですよね!次のゲームは多分、あずきとアーニャちゃんのゲームになるでしょう!待っててねーっ。聞き手の桃井あずきと」

 

奏「解説の、速水奏でした。またね」

 

(続く)