愛とは、全人生をかけてアイドルにチェスを教えること。

フリルドスクエアと行く、奥深いチェスの旅。

第1回Blitzトーナメント第1回戦第4, 5ゲーム[大原みちる vs 鷹富士茄子 / 桃井あずき vs 白坂小梅](解説・北条加蓮 / 聞き手・喜多見柚)

 

喜多見柚「こんばんは、柚だよ!」

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北条加蓮「遅くまでお疲れ様。北条加蓮だよ」

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柚「今日は、都合により最後になったけれど、トーナメントの1回戦の第4ゲームと第5ゲームを、解説に加蓮さんを、棋譜コメントには留美さんを迎えてお送りするよ!」

 

加蓮「よろしくね。これで1回戦は全部かぁ。なかなか面白い顔ぶれだね」

 

柚「加蓮さんは1回戦はシードで、2回戦からの出場ですよネ!相手はあいさんですかー、これは名ゲームの予感!」

 

加蓮「ふふ……アタシは、素敵なひとときを楽しむだけだよ」

 

柚「柚も加蓮さんと素敵なひとときしたいなぁ……」

 

加蓮「勝ち上がっておいで。そうすれば、絶対当たるからさ。もっともっと、見せてあげられる景色があると思うんだ」

 

柚「……よーし、頑張ります!」

 

・大原みちる vs 鷹富士茄子

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(Fig.1.1 : 1. d4 Nc6……白番、大原みちるはこのゲームが公式戦初登場となる。対する黒番、鷹富士茄子は普段は将棋を主に指しているが、最近は事務所のチェス人口の増加に感化されて以前よりも本腰を入れてチェスに取り組みだしたらしい。なお、鷹富士は4月に行われた3分切れ負けの将棋トーナメントで依田芳乃を跳ねのけ三連覇を達成している。)

加蓮「へぇ、ちょっと凝ったね。こういうの、好きだよアタシ」

 

柚「これ初めて見たー!」

 

加蓮「ミケナス・ディフェンスだね。1. d4に対して返す黒の初手としては結構珍しいんじゃない?アタシはやらないな」

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(Fig.1.2 : 2. Nc3 e6 3. Nf3 Nf6 4. e4 d5と進んで、本譜は手順前後の末にフランス防御のラインに合流した。大原は以前から『喜多見柚の名局好局つまみ食い』を観てチェスを勉強しているという。最近一番うれしかったことは、あの番組でメールが読まれたことらしい。)

加蓮「あー、ピアス・ディフェンスの回だね。『真夜中のパン屋さん』さんだ。柚ちゃんっぽいパンは結局持ってきたのかな」

 

柚「もらいましたよ~!『柚ちゃんはパンかなって思うことが時々ある』って言ってましたけど、謎い!」

 

加蓮「あはは、それは謎いなぁ。みちるちゃんはアタシが髪巻いてたら『チョココロネみたいですね!』って話しかけて来たこともあるなぁ。不思議な子だよね」

 

柚「そうですネ!楽しい人です!……ところで加蓮さん、この局面は、フレンチに合流しましたネ」

 

加蓮「そうだね。黒から2. ... e6と突いたからフレンチ・ディフェンスのノーマル・ヴァリエーションからd5ぶつけて、ナイトを白黒センターに総動員した形になったんじゃないかな。フレンチも序盤で結構分岐があるから、ひとつのラインに決め打ちするための作戦、なのかもしれないよね」

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(Fig.1.3 : 5. ed Nxd5 6. Bd3 Ncb4 7. Bb5+ c6まで。黒からd5とぶつければ5. edの取り込みは必然。そこからの流れでBb5+と出るのがチェックで入るのも黒承知の上だろう)

加蓮「上級者がコメントつけてくれると、あまり話すことないね。助かるけどプロデューサー的にはマズいかな」

 

柚「黒の6手目Ncb4は?」

 

加蓮「ビショップを攻めながら、ナイトの利きを重複させて、エクスチェンジしても攻撃ピースが絶えずdファイルにいるようにしたんじゃない?将棋で言う継桂みたいな」

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(Fig.1.4 : 8. Bc4 Nxc3 9. bc Nd5 10. Bb2 Bd6 11. 0-0 0-0の進行となり、お互いがこの局面でキャスリングをした。すこしゆっくりとした対局になるか)

柚「これは10. Bb2が難しいですネ」

 

加蓮「あ、やっぱりそう思う?そうだよね……なんというか、9. bcでb2からポーンがいなくなったんだから、10. Bb2とフィアンケットを組んで手の流れをつくろう、っていう先手の着想は凄くいいんだけども」

 

柚「c3~d4にできてるポーン・チェーンの所為ですよネ。同じ色のポーン・チェーンがあるビショップはそれだけで潜在的な可動域が狭まる……だから、ミドル・ゲームではそのビショップをどう使って行くのかが課題になる。今回のBb2だとモロにダイアゴナルにポーン・チェーンが来ちゃうから、感覚的に嫌ってカンジかな?ですよネ?」

 

加蓮「うん。あと、黒がキャスリングをしてくるのを計算に入れて、キングサイドにピースの利きを作っておきたい、っていうのもあったかな」

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(Fig.1.5 : 12. Bd3 c5 13. dc Bxc5 14. c4 Nb4と進んでみると、ここ数手で黒から上手く手を作られたようだ。大原は無心にアンパンを食べている)

柚「あんパン消費がメチャ早い……」

 

加蓮「頭使うモンねぇ、ブリッツ」

 

柚「なんとなく、白の手がぎくしゃくしてきましたネ」

 

加蓮「そうねぇ、12. Bd3は結局ビショップを引いてキャスリングした黒のキングサイドを狙った手だけど、手損の上に標的にされちゃったしなぁ。やっぱり10. Bb2に代えて10. Bd2の方が感触が良かったかなって」

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(Fig.1.6 : 15. a3 Nxd3 16. cd b6 17. d4 Bd6 18. d5 Bb7まで。第5ランクに先に手を掛けたのは大原。対する鷹富士はピースの効率がとてもいい。)

柚「15. a3はお手伝いですネ」

 

加蓮「まぁね。でも、16. cd~17. d4と手順に黒を追ってポーン・チェーンを前進させると、Bb2のロング・ダイアゴナルが通ってどう?ってことなんじゃないの」

 

柚「その間に黒もフィアンケットを済ませ、しかもこれで間接的なビショップ・ペアがキングサイドを狙ってますから、アタシは黒持ち!」

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(Fig.1.7 : 19. Qd4 f6 20. de Bxf3 21. gf Qe7と鷹富士は先にビショップを切ってからバッテリーを組んだ。大人しい外見とは裏腹に、相手の手を奪ってからの鷹富士は斬り倒しにくることに定評がある。)

加蓮「へぇ~、先に切るんだね!」

 

柚「白のポーン・ウォールを一撃で粉砕した……」

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(Fig.1.8 : 22. Rad1 Be5 23. Qd2 Qxe6 24. Bxe5 feとここに来て駒割りは互角だが、飄々とした鷹富士と対照的に大原の顔はやや暗い。手持ちのアンパンがなくなったからだろうか、それとも。)

柚「って、あんパン4つ食べてるし」

 

加蓮「胸焼けしないのかな」

 

柚「22手目Be5で斜めの利きを上手く繋いだ形が狙いだったんだネ!茄子さんは定跡とか手筋とかじゃなく、本当に読みと感覚でチェスをものにしてる人なんだネ!すごーi」

 

加蓮「それ以上はダメ」

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(Fig.1.7 : 25. Qd5 Qxd5 26. Rxd5 Rxf3 27. c5 bc 28. Rc1 Rc8 29. Rdxc5 Rxc5 30. Rxc5 Rxa3 31. Rxe5 Ra1+。激しいエクスチェンジが続く。大原はどこからかクリーンパンを取り出した。)

柚「あー、そっか!さっき20手目にビショップから先に切ったのは、浮いたダブルポーンのc3が、Rc3~Ra3と走る余地を観てたんだ!」

 

加蓮「このRa1は価値が高いなぁ」

 

柚「加蓮さんには、見えてました?」

 

加蓮「まぁね」

 

柚「すごいなー、アタシは誰かの対局だとどうしてもピースに乗り移れないっていうか……」

 

加蓮「乗り移れない?」

 

柚「そうなんです。柚は、対局している時は何かのピースに乗り移って、一緒にボードの上にいるような気がして」

 

加蓮「……」

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(Fig.1.8 : 32. Kg2 a5 33. Kf3 a4 34. Ke3 a3 35. Kf3 a2 36. Ra5 Kf7。パスポーンになった黒のaポーンが、ゴール前でパス待ちをする好位置に陣取った。)

加蓮「ってここでシュークリーム追加?!」

 

柚「どこから出したんだろう……」

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(Fig.1.8 : 37. Kf4 Ke6 38. h3 g5+ 0-1まで。大原は噎せながらキングを倒した。)

 加蓮「うっわぁ、棋風がわかる勝ち方だコレ」

 

柚「どちらでとっても、キビツイ。キングで獲るとRg1+が入りますし、ルークがaファイルからどけば黒はaポーンをプロモーションさせられる、いいトドメのサクリファイスだネ!お疲れ様でした!」

・桃井あずき vs 白坂小梅

柚「もう一つ、これは1回戦最後のゲームだね。あずきちゃんと小梅ちゃんか」

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(Fig.2.1 : 1. c4 d5と戦いが始まった。二人とも、公式戦はこれが初である。)

加蓮「イングリッシュ・オープニング(1. d4)にアングロスカンジナビアン・ディフェンス(1. ... d5)かぁ。結構感覚的には古いテよね。今なら1. ... e5と突いて黒が指せそう」

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(Fig.2.2 : 2. cd Nf6 3. Nc3 Nxd5 4. e4 Nxc3 5. bc e5まで。いきなり序盤でナイトの斬り合いが起きた。)

柚「華々しいですネ」

 

加蓮「そうね。積極的にエクスチェンジしかけて、メイトで殴るっていう古いチェスのゲームのコンセプトみたい。っていっても、そう仕向けてるのはどう見ても黒だよね。小梅ちゃん、どんなチェスを勉強してきたんだろう、興味が出て来たよ」

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(Fig.2.3 : 6. Bb5+ Nd7 7. Nf3 Be7 8. Nxe5 0-0と進む。8. Nxe5のナイトのぶつけは、Bb5でキングがピンされているので取れないのだ。臨機応変な桃井の指し手で、黒はピースの立ち遅れが目立ち始めた)

柚「これは巧いなぁー!」

 

加蓮「黒は6手目Nd7がちょっとこれから負担になるね。イマなら問答無用でc6突くでしょ」

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(Fig.2.4 : 9. Bxd7 Bxd7 10. Nxd7 Qxd7まで。この局面では、黒の最前線が初形から進んでいないのに対し、1ポーン丸まる得している白は前線をうまくキープしているように見える。)

加蓮「これはどっちから切っても一緒だね。柚ちゃんならどうする?」

 

柚「dポーンを突いてからクイーンを上がりたいカナ」

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(Fig.2.5 : 11. d4 c5 12. Be3 cd 13. Bxd4 b6 14. Qe2まで。黒は何とかbポーンから手を作りたい局面である。)

柚「スタッフさんが、あんパンを差し入れてくれたよ!さっきのを観てて、あんパンが無性に食べなくなったんだって」

 

加蓮「mgmg……わかる」

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(Fig.2.6 : 14. ... Rac8 15. Rd1 b5 16. Bxg7と進んだ。15. Rd1は桃井の仕掛けた巧妙な罠であった。)

柚「あんパン食べてる間に進んでた、てへぺろ

 

加蓮「ほーんとだ、てへぺろ

 

柚「16. Bxg7はクイーンにディスカバード・アタックを仕掛けながらキングの前の天井を吹き飛ばした味良いサクリファイスだね」

 

加蓮「サクリファイスっていっても取れないけどね」

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(Fig.2.7 : 16. ... Bd6 17. Bf6 Rce8 18. Rxd6 Rxe4まで。白坂はしばらく独り言を喋ったあと、首を振って敢然とルークを進めた。攻め合いを選んだようである。)

加蓮「へぇ……」

 

柚「精確に対処しないと一気に紛れそう」

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(Fig.2.8 : 19. Qxe4 Re8 20. Rxd7 Rxe4+ 21. Kd2 h6 22. Rxa7 Ra4 23. Rxa4 baまで。桃井にはきっと、このゲームの終わらせ方が見えているのだろう。)

加蓮「飛び込んで行って、引いたBf6がキングを縛るのに一役買ってるね。メイトかかってるわ」

 

柚「mgmg……」

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(Fig.2.10 : 24. c4 h5 25. c5 Kh7 26. c6 Kh6 27. c7 Kg6 まで。ビショップを攻める、最後のお願いだ。)

加蓮「cポーンのプロモーションが止められない、かぁ。ここから白盤持ってどう詰めたらいいかな?」

 

柚「?!くぁwせdrftgyふじこlp;@」

 

加蓮「あーあー、呑みこんでから喋りなよー」

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(Fig.2.11 : 28. Bd4 f6 29. c8=Q Kf7 30. Qf5 Ke7 31. Rb1 まで。)

柚「ここでRb1と引っ張って来れるのが、20. ... Rxe4+のチェックをdファイルに躱したキングの役得ってカンジ!」

 

加蓮「29. c8=Qの所為で黒のキングはf5に出られないんだ。狭いね」

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(Fig.2.12 : 31. ... Kd6 32. Rb7 h4 33. Qd7#まで。勝った桃井は2回戦第4ゲームでアナスタシアとの対戦がある。)

 柚「おお、綺麗なチェックメイト!さすが、『プロブレム大作戦』の講師をしてるだけのことあるネ!」

 

加蓮「終盤の読み合いに入ったらあずきちゃんは強いねー。殴り合いを選ぶのは危険だわ」

 

柚「二人とも、お疲れ様でした。これで1回戦の結果が揃ったネ」

 

加蓮「順当、なのかな」

 

柚「加蓮さんは誰が一番気になります?」

 

加蓮「アタシ?アタシは、純粋に気になってるのは遊佐こずえちゃんだけど、一番戦ってみたいのは柚ちゃんかな~」

 

柚「柚?!」

 

加蓮「うん。待ってるよ」

 

柚「……頑張っちゃいますよー!」

 

加蓮「ふふっ。それじゃ、今日は解説は北条加蓮、聞き手に喜多見柚を迎えてお送りしたよ。また会おうね」

 

柚「ありがとうございました♪」

 

(続く)