愛とは、全人生をかけてアイドルにチェスを教えること。

フリルドスクエアと行く、奥深いチェスの旅。

第1回Blitzトーナメント第1回戦1,3局解説[東郷あいvs二宮飛鳥 / 和久井留美vs双葉杏](解説・アナスタシア / 聞き手・桃井あずき)

 

桃井あずき「やる気、元気、桃井あずき!」

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アナスタシア「ドーブラエ ウートラ!おはようございます。アーニャです」

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あずき「今日は、第1回Blitzトーナメントの第1回戦、1、3ゲームをアーニャさんに解説してもらうよ!聞き手はわたくし、桃井あずきがつとめまーすっ」

 

アナスタシア「よろしく、です」

 

あずき「よろしくお願いしまーす!1回戦の第2ゲームは忍ちゃんが自分の講座で取り上げてくれた、一ノ瀬vs喜多見戦だね!」

 

アナスタシア「今日は、第1ゲームの東郷vs二宮、第3ゲームの和久井vs双葉をお送りしますね」

 

あずき「まずは第1ゲームから、観ていこっか!同時更新の棋譜コメは、文香さんがつけてくれます」

 

・東郷あい v.s. 二宮飛鳥

あずき「こちらは、あいさん先手で、ルイ・ロペスになったねーっ」

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(Fig.1.1 : 1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 でオープニングはルイ・ロペスに。東郷と二宮は初手合い、それもそのはず、二宮は本ゲームが公式戦初参加となる。最近は速水について神崎と共にチェスを勉強しているというが、強豪・東郷相手にどこまで自分のチェスを見せられるか)

アナスタシア「研究がしやすい分、実力の出やすい戦型だと、思いますね。また、かなり先までラインが整理されているので、早指しにはもってこいだとも、思いますね」

 

あずき「感覚的には、定跡の整備のされ方とか、将棋の角換わりにちょっと近い位置づけかも?あずきは、前にプロ棋士の先生同士が1分切れ負けで角換わりを指しているのを観たことがあるよ!」

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(Fig.1.2 : 3. ... a6 4. Bxc6 dc 5. O-O Bd6 まで。後手二宮の選択は3手目a6でモーフィ・ディフェンス。対して白番東郷は即座にビショップを切る4. Bxc6を敢行して、エクスチェンジ・ヴァリエーションになった。5. 0-0は東郷の用意の作戦だろう。持ち時間が多い先手を活かした、熟練のプレイヤーの思想だ)

あずき「5. 0-0までは穂乃香ちゃんのルイ・ロペス講座2回目で拾われていたラインだねっ。ここで黒が5. ... Bd6と出て、穂乃香ちゃんが紹介している流れを外れたよ。アーニャさんはこれをどう見ます?」

 

アナスタシア「ンー。そうですね……4. ... dcと取り込んだことで黒はcファイルにダブルポーンを抱える羽目になりますが、逆にdファイルはセミ・オープンになりますね。なので、このファイルにキングサイドのビショップを展開して、相手のキングサイドを早々と睨みつつキャスリングに近づけるのはある手だと、思いますね。最近流行ってる感じします」

 

あずき「なるほどーっ。具体的にはどういう流れになるんでしょう?」

 

アナスタシア「そうですね……もう一つここに黒がビショップを置く狙いにもなりますが、この後白から6. d4と突く手が考えられます。センターを弱めつつ、黒のdファイルにポーンを再生させながら自分はクイーンファイルをセミ・オープンにするという狙いで、手順にクイーンを出るような手ですね。この時に、6. ... edと堂々相手の狙いに乗っかって取り込む手が、今出たビショップのダイアゴナルを通す手に、なっているんですね」

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(Fig.1.3 : 6. d4 ed 7. Qxd4 まで。手順にクイーンをセンターへと繰り出す先手。)

あずき「アーニャさんの言ったとおりの展開。主導権は白だねーっ」

 

アナスタシア「消費時間は白が30秒、黒が1分弱ですね。この7. Qxd4は黒のキャスリングを難しくする手です。キャスリングするためには黒はg8のナイトをどかさないといけませんが、7. ... Nf6と跳ねると次に8. e5がポーン・フォークになってしまいます」

 

あずき「これはニェットですねー」

 

アナスタシア「フフ……これはニェットです。しかし、7. ... Ne7は8. Qxg7と白のクイーンを呼び込んでまたニェット、ですね」

 

あずき「VTRからは飛鳥ちゃんが焦っているようなカンジが伝わってくるよ。小刻みに揺れながら考えているのか、エクステの先もピョンピョンしてるっ」

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(Fig.1.4 : 7. ... Ne7? 8. Qxg7 Ng6と進んだ。アナスタシアがニェットと述べた手だが、果たして。)

あずき「おぉ、跳ねましたね」

 

アナスタシア「……ナイト、跳ねましたね。確かに一見すると8手目Ng6で取られかけたh8のルークにも紐がついて、クイーンを閉じ込めたようにも見えますが、キングサイドにキャスリングできなくなった分白が指しやすくなりましたね」

 

あずき「と、いうことは、黒はこれからクイーンサイドのキャスリングを狙いながら駒組する、ということですかー?」

 

アナスタシア「ダー、もしくは、キャスリングせずに戦うか、ですね。ただ、Bg5と白からビショップを出る手があって黒は纏めづらい感じ、です」

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(Fig.1.5 : 9. Bg5 Qd7 10. Re1 Qe6 11. Nc3 c5? まで。キャスリングしたルークの活用を急ぐ、モダンな味付けの先手陣である。)

アナスタシア「アー、11手目c5の感触がメチャメチャ悪い、ですね。対してトーゴーの10. Re1は価値の高い手です」

 

あずき「これでRad1ともう一つのルークを呼んできて、センターから押しつぶそう、ってことですよねっ」

 

アナスタシア「ダー。ソビエト軍の誇る『殲滅の原則』、ですね」

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(Fig.1.6 : 12. Nd5 Kd7 13. Rad1 Kc6 14. Qc3 b5?と進んだ。桃井推奨の13. Rad1が指された。二宮はゆっくりと首を振っている)

あずき「13. Rad1の前にしっかりと12. Nd5を入れておくのがあいさんらしい、堅実な手ですねーっ」

 

アナスタシア「これで黒のクイーンの利きを停めておかないと、Rad1と回った瞬間にQxa2と先手はaファイルを破られてしまいます。するとピースが偏りすぎている先手は一気に怖い形になりますね。14. ... b5とついてしまうと、終局も、近いですね?」

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(Fig.1.7 : 15. Nd4+ cdにて二宮に自殺手が発生、手を戻して指し直しとなる)

アナスタシア「ハラショー!15. Nd4+は素敵なダブル・アタックですね!」

 

あずき「飛鳥ちゃん、焦ってますね」

 

アナスタシア「チェスでは、イリーガル・ムーブは故意・過失に関わらず認められませんね。なので、15. Nd4+の局面から指し直しになります」

 

あずき「これを取れるとみていたということは、Qc3の縦の利きを見逃してたんですかねーっ」

 

アナスタシア「ウッカリ、ですね。チェスの試合、緊張します。練習と実戦もまた違いますね?」

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(Fig.1.8 :  15. Nd4+ Kb7 16. Nxe6 Bxe6 17. e5 Nxe5 18. Rxe5 Bxe5 19. Qxe5 Rhc8と進む。黒の持ち時間はもう30秒を切っている。白は読み切っているのか的確にピースを減らしていく。)

あずき「15. Nd4+がクイーンとキングの両方に当たっているのが激痛だったね……」

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(Fig.1.9 : 20. Ne7! c6 21. Qxc5 Rc7 22. Be3 Kb8 23. Qb6+ Rb7 24. Bf4#と4手メイトに打ち取って、東郷が貫録の勝利をおさめた。)

 あずき「キングの退路を塞ぐ20. Ne7がプロブレムみたいな筋で好手だねーっ!」

 

アナスタシア「すぐにルークとエクスチェンジをするのではなく、出口を塞いでしまうために使うのは、上手ですね」

 

あずき「両対局者、おつかれさまでした。このゲームに勝ったあいさんは、2回戦で加蓮さんとのゲームに進むよ!そちらも注目のゲームだね!」

 

・和久井留美 v.s. 双葉杏

あずき「アーニャさんは、最近新しく冠番組を持たれたんですよねっ!」

 

アナスタシア「ダー。『星巡る物語』、ですね。面白い企画だと思います。チェスの世界のこと、この国ではまだあまり知られてない気がしますね。もっとみんなに、いろんな優れた人間のドラマを知ってほしいです」

 

あずき「あずきも毎回楽しく観てます!そうですねー、フィッシャーの壮絶な人生に触れたりすることは、日本では自分から探さないとない機会かもしれませんしねっ」

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(Fig.2.1 : 1. d3と白番和久井の突き出しでもってミーゼス・オープニングになった。両者は過去2度の対局があり、いずれも和久井が勝っている。黒番双葉は基本的にBlitzしかしないため『早指しの妖精』の異名があるが、この和久井のイレギュラーな作戦にどう立ち回るのか。)

あずき「これは珍しいですねーっ」

 

アナスタシア「電撃戦と呼ばれる早指しの作戦としては二つありますね。慣れ親しんだ形で時間を中終盤に残すトーゴーのような作戦と、このルミのように、相手の裏をかくような作戦を自分で研究してきて、ぶつけることでタイムアドバンテージを握ろうとする作戦、ですね」

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(Fig.2.2 : 1. ... d5 2. g3 e5 3. Bg2 c6 と進んだ。白の速攻フィアンケットに、黒がセンター・コントロールで応酬するというなかなか珍しい展開になっている)

あずき「なんていうか、ちょっと違和感のある序盤だねー……なんだろう、柚ちゃんと向かい合ってラーメン食べてるときに似てるかも……?」

 

アナスタシア「ユズ、左利きですね。アーニャは、ユズとご飯食べるときは左でお箸もちます」

 

あずき「そうそう!利き手が反対の人と向かい合ってご飯食べてるときに感じるような、そんな感じ!」

 

アナスタシア「黒がセンターコントロールして、白がそれを受けながら低い陣形を組んでいるから、ですね。普段と逆なカンジです」

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(Fig.2.3 : 4. Nc3 Be6 5. e4 de 6. Nxe4の進行。7. Ne2~いずれNd4に出てセンターの制海権を取り返したいがどうか。)

アナスタシア「これはルミ、しくじりましたね……」

 

あずき「えぇ?!まだ互角でしょー!」

 

アナスタシア「このゲームは、どこまでいっても互角で終わるかもしれませんね」

 

あずき「あ……そっか!それが杏さんの狙いってことなんだ!」

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(Fig.2.4 : 6. ... Nf6 7. Ne2 Nxe4 8. Bxe4 Bd5。双葉は珍しく30秒ほど小考し、ナイト・エクスチェンジを狙う6手目Nf6を着手した。)

あずき「ナイト・エクスチェンジからビショップをぶつけましたかーっ……」

 

アナスタシア「ここはゲームの大勢の分水嶺、ですね。まだ黒から寄せ合いに持ち込むこともできる局面です」

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(Fig.2.5 : 9. 0-0 Bxe4 10. de Qxd1と進んで、ここで双葉の狙いがはっきりした。エクスチェンジを強いてドローに持ち込むつもりである。)

あずき「これは、手順自体は相当激しいですけどどうですか?」

 

アナスタシア「強制エクスチェンジの連続で、ドローに持ち込むつもりですね。ここまで杏は、一度考え込んだのを除けばすべてノータイムで指してますから、ルミの奇襲じみたミーゼス・オープニングに対するアンズのアンサーの一つがこれ、ですね」

 

あずき「ナイトが相討ちし、ビショップが斬り合い、クイーンが今手をつないでボードを去ろうとしているよ!」

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(Fig.2.6 : 11. Rxd1 Na6 12. Be3 Bc5 13. Bxc5 Nxc5。是が非でも局面を落ち着かせない双葉の指し回し。糖分補給だろうか、飴玉を噛み砕く音が聞こえてくる。)

アナスタシア「ここまでやられてしまうと、完全に白の作戦負けというか、キャスリング損にすら見えてきますね。チェスは奥が深いです」

 

あずき「そっか、キングが第7ランクに移動すればキャスリングをしなくてもフルオープンになったdファイルでルークをぶつけられるってことで、結果的に黒が手得してるんだね。ナイト、ビショップ、クイーンと相手の攻撃ピースを奪ってるし、キャスリングをする必要もないから……」

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(Fig.2.7 : 14. f3 Ke7 15. Kf2 Rhd8 16. Ke3 Rxd1 17. Rxd1 Rd8 18. Rxd8 Kxd8。何とかして手を作ろうとする先手だが、それを黒が絶対に許さない。)

あずき「f3は何とかして手を作りたいという和久井さんのお願いですか」

 

アナスタシア「そうですね。この局面、『手を作ろう』と思って読むのはとても難しい。でも、『相手の手に適切に返して、ドローにしよう』と思って読むのは、ピースが少なくてかなりやりやすいはずですね」

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(Fig.2.8 : 19. Nc1 Ke7 20. Nd3 Nxd3 21. Kxd3 1/2-1/2。ここでドローが成立。本トーナメントはドローでも黒の勝利となるアルマゲドン方式が採用されているので、これで手合いは双葉の1勝2敗となった。勝った双葉は2回戦で速水奏と対戦する。)

あずき「うわー、お疲れ様でした。和久井さんがすごく悄然としてますね」

 

アナスタシア「お互い、使用した時間が1分強ですね。ルミは、完全に自分の作戦ミスを悔いているのでしょう」

 

あずき「しかし、杏さんはこれだけの数のエクスチェンジ手順をあの短時間で読むのだから、真っ向からミーゼスを受けて立ってもよかったんじゃないですかねっ」

 

アナスタシア「たぶん、それをやるには飴玉が足りなかったのですね」

 

あずき「なるほどー。勝った杏さんは、2回戦で奏さんと対戦だよ、これは楽しみだねーっ」

 

アナスタシア「そうですね。アーニャも、いろんなゲームが見られるのでこういうイベント、大好きです!」

 

あずき「それでは、今日は1回戦から2ゲーム、解説してもらいました。聞き手は桃井あずきでした」

 

アナスタシア「解説は、アーニャ、アナスタシアでした。またお会いしましょう」

 

あずき「アリーヴェデルチ~♪」

 

アナスタシア「アズキ、それはロシア語じゃないですね」

 

(続く)