愛とは、全人生をかけてアイドルにチェスを教えること。

フリルドスクエアと行く、奥深いチェスの旅。

喜多見柚の名局好局つまみ食い[Horwitz Defense / Tigran Petrosian v.s. Viktor Korchnoi, 1946, St.Petersburg]

 

 やっほー。柚だよ。

f:id:rikkaranko:20170509013036j:plain

 総選挙、今日までかー。デレステのイベントはおととい?昨日までだっけ?いずれにせよ、プロデューサーのみなさま、お疲れ様です∠(`・ω・´)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

∠(`・ω・´)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ゴールデンウィークはあっという間に終わっちゃったね。こっちはこれまでどおりの運行を続けながら、また色んな企画をやって行こうと思ってるから、よろしくネ!

 

 今日紹介するのは、ペトロシアンとコルチノイの熱戦だよ。1946年、第二次大戦が終わってすぐだね。ペトロシアンはソ連のプレイヤーで、1946年当時17歳カナ?数学博士でもあり、また受けの棋風と強固なメンタル・疲れを知らないフィジカルから『鉄のペトロシアン』と呼ばれた第9代世界チャンピオンだよ!チェスの『鉄板流』森内名人みたいな感じカナ!

 対するコルチノイは15歳だね。コルチノイは昨年6月6日にこの世を去るまで、現役最高齢のプレイヤーとしてチェス界にその名を轟かせ続けた名プレイヤーだよ!出身はソ連、その後オランダへ亡命しているね。オールラウンダーだけど、相手に仕掛けさせて反撃で仕留めるような棋風で鳴らした選手だったんだって。

 今回持ってきたのは、若き天才プレイヤーの激闘譜!

 

 オープニングは、1. d4 e6とペトロシアンのクイーンズ・ポーン・オープニングに対してeポーンを1マス前進させたコルチノイが選択したホロウィッツ・ディフェンス

f:id:rikkaranko:20170509020136p:plain

(Figure.1 Horwitz Defense : 1. d4 e6 まで)

 ここから、2. Nf3 f5と、手順前後でダッチ・ディフェンスのような形になったよ。

f:id:rikkaranko:20170509020316p:plain

(Fig.2 : Fig.1 ~ 2. Nf3 f5 まで)

 1. d4に対してすぐさま1. ... f5と返す形を、ダッチ・ディフェンスと呼ぶんだよネ。黒番がfファイルからの反撃を常に狙う積極的な形で、攻撃的なオープニングなんだ。ウチの事務所では、フレデリカさんの裏芸だネ!

 もしかすると、コルチノイは2. ... d5と突く含みも残して先にeポーンを突いたのカモ。で、白のペトロシアンがfファイルにナイトを跳ね出してきたから、fポーンを突くこの形にしたのかもネ!

 お互いがキングサイドのマイナーピースを展開して、Fig.3だよ。白はフィアンケットを組んでいるのが主張。対する黒番は、d5~e6~f5とチェーンで繋がったポーンの影からナイトとビショップが覗く好形だネ!この黒の形は特に、『トーンウォール・フォーメーション』と呼ばれる形のスタンダードだよ!ストーンウォール・フォーメーションの狙いは、Nf5~Qe8~Qh5~g5~Rf6~Rh6という手厚い反撃形を築くことにあるんだよ!どうでもいいけど、このナイトとビショップの配置、将棋の77角型石田流みたいじゃない?

f:id:rikkaranko:20170509021113p:plain

(Fig.3 : Fig.2 ~ 3. g3 Nf6 4. Bg2 d5 5. 0-0 Bd6 まで)

 ここから、6. c4 c6 7. b3 0-0とお互いがキャスリングを済ませたところが本局1度目のポイント!

f:id:rikkaranko:20170509022206p:plain

(Fig.4 : Fig.3 ~ 6. c4 c6 7. b3 0-0 まで)

 ペトロシアンは7手目b3で、次にBa2とフィアンケットを組むことを見せたように思うよネ?もちろんそれもあると思うケド、それよりも『相手のビショップと自分のポーンがいるマスの色』に着目すると……

 黒のBc8は白マスビショップなのに対して、白陣はポーンを白マスに形よく展開しているから、このポーンは白陣に早い段階で脅威にならない。対して、白マスにポーンが割かれている分だけ、黒の黒マスビショップ、つまりBd6は白にとって危険な攻撃ピースになり得る、という判断ができるよネ!こういう読みに基づいて、ペトロシアンはこの早い段階で8. Ba3とビショップ交換を迫り、潜在的な危険を盤上から排除する手を選びにいったよ!

f:id:rikkaranko:20170509022924p:plain

(Fig.5 : Fig.4 ~ 8. Ba3 Bxa3 9. Nxa3 まで)

 攻撃に活躍させようとしていたビショップこそ切り取られたものの、この局面で手番が転がってきたコルチノイ。ビショップ・エクスチェンジの所為でナイトを端に追いやることにも成功したし……と待ってましたとQe8~Qh5とクイーンを使って反撃体勢を整えようとするよ!

f:id:rikkaranko:20170509023125p:plain

(Fig.6 : Fig.5 ~ 9. ... Qe8 10. Nc2 Qh5 まで)

 この局面!ここで、ペトロシアンから神がかり的な一手が繰り出されるんだよ!得てして神様がくれたかの様に見える素晴らしい手は、ゲームが終わってみて振り返ると、涙が出る程詩的な収束がすべてその手から始まっているのに、そのときにはそれが最後まで利くなんて思いもよらないような手なんだネ。

f:id:rikkaranko:20170509024045p:plain

(Fig.7  : Fig.6 ~ 11. Qc1! まで)

 この手は、見えなかったコルチノイが責められるべき類の手ではなくて、見えてしまったペトロシアンが素直に最大級の賛辞でもって称賛されるべき、そんな手だと柚は思うんだ。この局面を、あと10手。覚えておいてネ!これは即時的には黒からのg5の突き出しを消しているんだけど、この思慮深き女王は、もっと深遠な狙いを秘めているんだよ!

f:id:rikkaranko:20170509024155p:plain

(Fig.8 : Fig.9 ~ 11. ... Ne4 12. Nce1 まで)

  駒の打ち直しが利かないチェスでは、将棋と比べて手の損得というのに敏感だ~、っていうのは穂乃香ちゃんが言っていたけれど、この特徴がもたらす将棋との違いがまだいくつかチェスにはあって、そのなかの一つがアタシは「相手の狙いをつぶす手の相対的な価値の違い」だと思うんだ!歩兵を持ち駒にひとつ持つだけで、いくつかの攻め筋や受け筋が生まれることって、将棋だと結構あると思うの。逆に、それができない分、チェスではわかりやすい相手の狙いを挫く手っていうのは、自分がいい手を指すのと同じくらいか、あるいはそれ以上に価値のある手なんじゃないかなって。柚の独り言だけどネ!進めて盤面は12. Nce1だね。これはNd3~Nfe5と、ナイトペアを平行四辺形の様に飛ばして盤面をコントロールする、見えにくい力を溜める手だネ!。感覚的に、将棋でいう『桂馬の利きに重ねて桂馬を打つ』継ぎ桂の手筋、に似てるカモ。

f:id:rikkaranko:20170509024337p:plain

(Fig.9 : Fig.8 ~ 12. ... g5 13. Nd3 Nd7 14. Nfe5 Kh8 15. f3 Nd6 まで)

 しっかりfポーンをついてf3~e2がQh5に対する防壁をなしているのがまず目につくね。鉄板流といわれるのもうなずける……って、鉄板流はアタシが勝手に読んでるんだった。テヘッ

f:id:rikkaranko:20170509024424p:plain

(Fig.10 : Fig.9 ~ 16. e4 まで)

 このポーン・サクリファイスは取っても取らなくても悪くなるテのヤツだね!16. ... deと取る手には17. Nxd7 Bxd7に18. Ne5が厳しい狙いだね。

f:id:rikkaranko:20170509024603p:plain

(Fig.11 : Fig.10 ~ 16. ... Nf7 17. cd Ndxe5 18. de cd 19. ed ed 20. f4 まで)

 最後の20. f4の突き出しは、フィアンケットしてから出番を今か今かと待ち構えていたBa2を使う待望のディスカバード・アタックだネ!これでdポーンを抜かれてしまうようでは、黒に勝ち目はない、そんな局面。

f:id:rikkaranko:20170509024654p:plain

(Fig.12 : Fig.11 ~ 20. ... Rd8 21. Qc7! まで)

 あの11. Qc1から10手後。盤面がこうなっているとは誰が想像できたカナ。ペトロシアンにはこの風景があのときにはもう見えていたのカナ。溜息しか出ない一撃だね。

f:id:rikkaranko:20170509024752p:plain

(Fig.13 : Fig.12 ~ 21. ... b6 22. fg Ba6 まで)

  黒のb6~Ba6は、第8ランクのルークを連携させて相互に守らせようっていう狡猾な手だけれど……。

f:id:rikkaranko:20170509024823p:plain

(Fig.14 : 投了図はFig.13 ~ 23. Nf4 1-0

 この手でコルチノイは投了。これはクイーンを攻める手ながら、このクイーンが逃げたら紐が取れて24. Qxf7とナイトを抜いて黒のキングを秒殺しに行こうっていう狙いがある手だね。そして、逃げざるを得ないから、これは投了やむなし、と。

 

 いいゲームだったネ!短いながら、いろんな勝負の機微や両者の組み立てがうかがえる、教材としても観賞の対象としても、名局中の名局だと思うナ!

 

 さてさて、今日のお便りは……「オクラホマ州でオクラを育てている農夫」さんからだよ。オクラホマとオクラって関係ないんじゃ……関係ないよネ?!しっかし、柚もついに海外進出かぁ……嘘くさいけど……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 柚ちゃんハロー!いつも農園を回りながら楽しく聴いています!

 ところで、柚ちゃんは過去のゲームを並べるのには、どんな意味があると思いますか?日々の勉強に取り入れるべきかどうかも含めて、回答していただけたらうれしいです!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 とのことだよ~!まずこの番組、局面図めっちゃ動かしたりしててラジオじゃないんだけど、まぁネット放送とかで農園で聞いてる可能性もあるから柚は深く突っ込まないよ!

 そうだね~、過去のゲームの中でも、自分の力量でわかるものをまずは少しずつ並べてみるのがいいかもしれないカナ。その中でも、解説がわかりやすいものだったり、また『ゲームの組み立て』が学べるもの、つまり意図がわかりやすいものだったり、コンビネーションが狙い通り決まってしまったようなゲームを繰り返し並べることで、手が、目が、チェスの呼吸や感覚を体得していく、っていうのはあるかなぁって思います!チェスはマインドスポーツって言われるだけあって、ちょっとバドミントンとかスポーツに似ているところがやっぱりあるのカナ?

 

 以上、今日の『名局好局つまみ食い』はここまで!最後に今日紹介するのは~?おお、こういうのは今までにないタイプでちょっと珍しいネ?

――ペトロシアンは20手先の危険を事前に察知して排除する能力をもっているんだ。

 これはフィッシャーがペトロシアンを評していったときの言葉だネ!

 こうやって、プレイヤー同士がお互いに言及したコトバなんかは、それぞれの関係性や敬意とか、ライバル心やコンプレックスとか、いろんなものが見えてくると同時に、名プレーヤーが見出した誰かの優れた点ということで、アタシたちにいろんなことを教えてくれる気がするんだ!

『鉄板流』は森内名人の棋風を借用してアタシが読んでるだけだけど、『くろがねのペトロシアン』、そのガッツは味わっていただけたでしょーか!また次回!

 

(続く)