愛とは、全人生をかけてアイドルにチェスを教えること。

フリルドスクエアと行く、奥深いチェスの旅。

双葉杏のノーチェス・ノーライフ[ポーンの使い方を考える]

 

 おはよう、杏だよ。二回目だよ。

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 今日もフリスクのみんなの予定があわなかったっていうので、杏が急遽の代打だよ~、でも、まぁ、しょーがないよね。

 

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今日の杏ちゃんは、勤労意欲に燃えてますね

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 杏だって、たまにはやるさ。

 

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じゃあ、プロデューサーさんと穂乃香ちゃんが用意しているチュッパチャップスツリーのことは内緒にしておきますね

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 ちょっ

 

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しかもふたりに別々にねだってそれぞれに用意させたなんて……

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 やめろォ!

 ……えー、というわけで、『双葉杏のノーチェス・ノーライフ』、二回目を始めよう。まさか杏も、二回目があるなんて思ってなかったよー。

 

 じゃあ、今回も、届いたおたよりやメールから見つけた質問に杏が答えていく感じで進行しようか。ほんと、プロデューサーがいきなり持って来るもんだから『ノーアポイント・ノープラン』って感じだよ。んー、まずは「ウサミン星とふなっしーン家って実は結構近いんじゃね?」さんからだよー。杏は知らないよ。

 

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 私は二歩のルールがある将棋を入口としてチェスに入ったためか、序盤のポーンの折衝がよくわかりません。取ってよいポーンなのか、取らずに攻撃を外すポーンなのか、とか、そういうあたりの機微についてよかったら教えてください。

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 ……とのことだよー。なるほどねぇ。ポーンは前の駒取れないしね。何か相手の駒を取る時はナナメに進んでファイルが変わっちゃうのも独特だよねぇ。って、杏も将棋から入ったから未だに『駒』とか『角道』とか言っちゃうんだけどさ。

 

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こんなのも届いてますよ

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 んーと、なになに?「ウサミン星にはバラ園とかパルコとかありそうじゃね?」さんからだよー。もう杏しらないからね。

 

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歩の手筋、みたいな感じでポーンのテクニックをまとめて解説してほしいです

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 君たち、菜々さんは弄り倒すのにチェスには真摯なんだね。ま、杏はいいけど。菜々さん総選挙頑張ってるみたいだし、こうやって弄られてるのも愛情表現なんだと杏は信じてるよ。

 

 さて、じゃあ今日は『ポーンの使い方を考える』って感じで行こうか。

 

・壁としてのポーン

 これが一番わかりやすい、チェス独特のポーンの使い方だよね。

 要は、『ポーンをぶつけることによって、相手のポーンの進軍を止めちゃおう』ってこと。ポーンは目の前のマスの敵駒が取れないからね。

 もっともよく出て来る例が、1. e4 e5じゃない?

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 将棋だと、縦が9マスだから真ん中は5マス目なわけで、ここまで歩を進めるのを『位を取る』って言ったりするよね。実質その筋の支配権を握りましたよー、みたいな。『居飛車は位が取れれば指し手に困らない』なんて言われたりして。

 チェスは縦のファイルは8マスだよね。ということは、相手が縦5マス分の支配をするってことは将棋よりも都合が悪いんだよ。そして、ポーンは各駒最初のムーブだけ、一度に2マス動いて、それぞれのキングから見て4ランク目まで前線を押し上げることが出来るよね。だから、お互いがそれ以上進まない様に、って第4ランクと第5ランクで睨み合うことが多くなったりするんだよ。

 

・ポーンの形

 次はこれ。悪形・好形と呼ばれる目安の形をやっていくよ。

 

1.ポーン・チェーンとポーン・ファランクス

 まず、杏といっしょにこのゲームの最序盤を並べてみようか。

 1. d4 d5 

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 これは『壁としてのポーン』だね。続いて、2. Nf3 c5。

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 c5、d5とポーンが並んだね。こういう、センター付近で横並びになったポーンを『ポーン・ファランクス』っていうよ。駒同士の連結はそんなによくないけど、注目すべきは盤面の支配力だね。図を見てわかるとおり、たった2つの最弱の駒が、相手の第4ランクの50%を支配しているでしょ?ポーンは斜めに利きがある駒だから、横並びにすると利きが重ならず三つ編みみたいに前のランクをコントロールできる、覚えておいてねー。

 ここから、3.c4 e6っと。

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 なんで3. dcと取らなかったの?って思うかもしれないけど、その考え方については後々説明するよ。うん。時間あったらだけどね。

 これは、e5じゃなくてe6って進めることで、このポーンが最初に動いたd5のポーンに利くんだよね。d5が取られても、即座に取り返して好形を崩さなくて済むでしょ。こうやって、ポーンの利きを被せるようにナナメに配置するのを『ポーン・チェーン』って言うよ。ポーン・ファランクスと比べると支配力は結局最前のポーンだけに依存するからそんなでもないけど、そのかわり連結が良いんだね。オープニングからミドルゲームでは、ポーン・ファランクスやポーン・チェーンといったこの好形を目指して駒組みしながら、盤面のイニシアチブを握ろうとお互い駆け引きしていくんだ。

 ここで、3. c4としなかったらどうなってた?ってことを考えてみると、当然次に黒がc4とポーンを突く手が、第4ランク第5ランクを股に掛けてのポーン・チェーンを築く手になって、白としてはイヤだよね。相手のポーンが好形を築かない様に、こちらのポーンを動かす、っていうのも大事な観点だと思うよ。

 

2.ポーン・フォーク

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 フォーク、って両取りのことだったよね。ナイトの専売特許だと思ってるんだったら、侮っちゃダメだよー。ポーンにフォークされることほどうざったいことって、チェスではそうそうないんだから。一番価値の低い駒に両取りを掛けられる、例えば上みたいな局面。イヤだよね。

 そうそう。ポーン・ファランクスはこんなふうに進軍しながらポーン・チェーンに組み替えられるんだよ。覚えといて損はないよねー。

 

3.ポーン・シェルターとポーン・ストー

 これは1.と2.の応用みたいな感じだよたぶん。

 『ポーン・シェルター』っていうのは、キングやクイーンの傍にある、こんな感じの防御柵だね。

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 キャスリングしたとき、反対サイドはポーンを伸ばしてスペース・アドバンテージを取ろうとすることが多くて、逆にキャスリングしたサイドではあまりポーンを伸ばさずに守りに使おうとするのが多いのかな。

 黒の様に、ポーン・ファランクスの概念で守るのはナナメ駒から攻められにくいんだけど、終盤バックランク・メイトでいきなり頓死することもあるから注意だね。

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 逆に白の様に、これに備えてポーン・チェーンの概念で守ろうとするのは、ビショップとナイトが攻略に来るからね。一長一短って感じかなー。

 

 あとは、ポーン・シェルターを攻める大事なテクニックが、『ポーン・ストー』だよ。

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 こんなふうに、相手のポーン・シェルターを荒らすためにポーンを突くんだね。ポーンの利きが斜めにあることを考えると、美濃囲いや穴熊囲いを上から桂馬張ったり香車置いたりして攻めるのに似てるかもね。

4.ダブル・ポーン

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 この局面から考えてみようか。これはフレデリカv.s.加蓮のゲームからで、ダッチ・ディフェンスって形だけど、これは穂乃香にでも今度聞いて。杏がやりたいのはあくまでポーンの形だからね。白がここから1. Qe2と、次にe4の突き出しを見せて大模様を張ろうって手で攻めかかるよ。以下、

1. ... Ne4 2. Bxe7 Nxc3 3. bc Qxe7

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と進んだよ。いやー、手練れ同士の対局は駒のぶつかり合いが派手で杏は目が回るよ。杏がここで観て欲しいのは、白のcファイルのポーンの形。

 こうやって、駒交換の結果とかでポーンが縦に並んじゃう形があるよね。これを『ダブル・ポーン』と言うんだけど、一般的にはこれ悪形なんだよね。なんでかって、後ろのポーンが進めない、駒の連結は悪い、自分の駒の展開の邪魔になる、という理由があるからだね。これは序盤のダブル・ポーンだし、白はクイーン・サイドでスペース・アドバンテージを主張しにくくなってはっきり悪形だね。

 ダブル・ポーンっていうと、最近この番組でこんな形出て来たの、覚えてる?

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 これは柚とフレデリカのレッスンだね。Ba7が白のNe3を抜いてBxe3と仕掛けてきたところで、柚がfeと取り込んだ、って局面だよ。

 これだってダブル・ポーンだよね。って思うんだけど、これはスペース・アドを主張しなくてもいいキングサイドに出来たものだし、何よりこのダブル・ポーン、ポーン同士の連結は悪いけど、この場合それぞれに他の駒の紐がついてるから、ここにダブル・ポーンを築くことで逆に柚のキングが安全になってるんだよね。だから、一般的な悪形は時と場合によっては好形にもなり得るってことだよ。その形が良いか悪いかの判断基準は、さっきから言ってるような感じだね。

 

・エンドゲームでのアンパッサン

 まずこの局面見て貰おうかな。

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 これは、今や事務所内のレーティングトップ5に入るようになった柚が覚えたての頃に指してたゲームの終盤からもってきたんだよ。柚は黒。相手はこずえだったかな。

 柚の勝勢で、1. ... Kxh3と白ポーンを抜いてあげれば、hポーンのプロモーションが確実で勝っていたような局面だね。駒割りも、黒のがポーンひとつ分多いしさ。

 ……でも、ここで柚が指したのは1. ... e5だったね。使えてなかった駒を使って良い手のように見えるけど。あんまり実戦で出て来ないからいつも頭から抜けちゃうルールがチェスにはあるんだよね。それがたまたま、こずえに味方しちゃったんだよー。

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2. dxe6 e.p.! エンドゲームのアンパッサン。これで駒割りは互角、速度が逆転してこずえの勝ち。

 意外と忘れがちだけど、こういうことが時々起こったりするから、ポーンは侮れないんだよねー。

 

・取るや、取らざるや

 さて、最後にこれをやろうか。

 みんなお待ちかね、ポーンがぶつかりあったとき、取るのか取らないのか、をどう決めるの?って話だよ。

 でも、もう観てきてわかるとおり、一般的な見解はあっても局面局面でそれが本当にいいか悪いかって変わるんだよね。だから、杏はここで評価の目安を書いておしまいにするよ。

 

(1)序盤でのポーン交換は、一方的にメジャーピースが展開できるなら有利

(2)センター付近でのポーン交換は、クイーンやビショップの働きが良くなる半面、相手の駒も活躍しやすくなるので棋風と状況から判断

(3)中盤~終盤近くまで整備されている定跡なら、とっととポーン交換からお互い駒の利きで殴り合う展開になることも多い

(4)なんだかんだ、センター・コントロールは自分の駒が有利に展開できるための道路整備

(5)a、hファイルなど狙われにくいポーンはプロモーションに絡みやすい

(6)ポーン・チェーンは同じ色のマスのビショップにとっては邪魔でしかない

 

 杏が思う優先順位はこんな感じかな。センター・カウンターなんかでいきなりポーン交換が起こるのは、そのあと手順に黒のクイーンが出られるからだよね。黒はドロー上等の勝負をするんだから、早めに一方的にメジャーピースが展開できるなら……ってことだね。こんなふうに、手番によって使い分けてもいいかも。

 大事なことは、ポーンは序盤・中番・終盤でそれぞれ役目が違うってことを、ゲームを通じて認識することだと杏は思うんだ。

 序盤……センター・コントロールの要。

 中盤……ピース展開を助けながら有利なエンドゲームに持ち込む。

 終盤……プロモーションを狙いながら、同じファイルの相手ポーンの昇格を妨害する。

 こんな感じかな。

 

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メールが来てますよ

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 んー、どれどれ。「ウサミン星って総武線快速のどこかにあるんじゃね?」さんからだよ。もうやめてあげなよ……。

 

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杏ちゃんに質問です。チェスが出て来るアニメでお薦めは有りますか?

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 あー。アニメかぁ……やっぱり、『コードギアス 反逆のルルーシュ』じゃない?杏も好きだよ。

 

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王様から動かないと、部下がついてこないだろう?

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 ベッタベタの厨二病だけどやっぱりカッコいいんだよね。飛鳥に今度お薦めしてあげよう。

 

 最後に、今日杏が紹介する言葉はこれだよ。

――ポーンは、チェスの魂である。

 これはフィリドールの言葉だね。フィリドールは18世紀の音楽家でもあるチェス・プレイヤーで、特に序盤におけるポーンの役割をいち早く認識し、研究したとされているよ。フィリドール・ディフェンスなんてオープニングもあるよね。オープンゲームのオープニングだから、きっとそのうち穂乃香がやってくれるんじゃないかな。

 今日のお相手は、双葉杏でした。杏はプロデューサーと穂乃香の所に行かないといけないから、じゃあね。

 

(続く)