愛とは、全人生をかけてアイドルにチェスを教えること。

フリルドスクエアと行く、奥深いチェスの旅。

喜多見柚の名局好局つまみ食い[King's Indian Defense,Orthodox Variation,Modern System/Yannick Pelletier v.s. Andreas Skytte Hagen, 2013, European Individual Championships]

 

 みんなのきたみ、喜多見柚だよ!おまたせーっ!

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 はい、今日は三回目の……あれ?エイプリル・フール回を挟んだから実質二回目か。まぁいいや、どっちでも。楽しければいいよね、柚ルールだよ!この前は忍ちゃんのところにお邪魔したね!自戦解説、ってなんか照れ臭いね。

 柚、思ったことがあって。何をしたらいいのか分らない時ってあるじゃない?そーいうときに、意味のない動きをするかどうかじゃなくて、自分が選んだ動きになにがしかの理由を見いだせるようになることが、上達の一歩目なんだなァ……って。いいか悪いか、じゃなくて、これこれこーんな理由で、良さを求めた動きなんだよ!って後から説明できるというか。難しいね、えへへ。

 

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何をしたらいいのかわからない、そんな状況はチェスだけに限った話じゃないですね。

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 たしかに、そーかもね!スタッフさんもいろいろ苦労してるんだ!柚は、楽しければいいんだと思う。柚ルールだよ!そして、もっと大事なのが、自分の楽しいが、誰かの楽しいを邪魔しないってこと!これは、柚ドクトリンだよっ!

 

 今日紹介するのは、2013年のヨーロピアン・インディビジュアル・チャンピオンシップから!そうだ、今度ショーコちゃんやノノちゃんたちと『インディビジュアルズ・チャンピオンシップ』なんてやったら面白いかも……?

 白番のYannick Pelletierは、スイス生まれフランス在住の、スイスのグランドマスター(GM)だよ!2003年時点でR2600を超えていた強豪だねー。対する黒番のAndreas Skytte Hagenは、デンマークのインターナショナルマスター(IM)だよ。

 

 初手からはまず、1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7と進んだよ!(Figure.1.1)

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(Fig.1.1 : 1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 まで)

 これは、ハイパー・モダンと呼ばれるタイプの概念だね!黒は、最序盤で白によるセンター・コントロールを甘んじて受けて、代わりにフィアンケットを組んで即行でキャスリングを狙い、囲ってから素早く反撃に移そう、という後手番であることを割り切ったような感じカナ?

  なかでも、今日紹介するキングズ・インディアン・ディフェンスのように、『インディアン』と付くハイパー・モダン・オープニングは、相手の形に係わらず基本形が組み上げられるというのもメリットなのかな?将棋でいうところの、ノーマル振り飛車に低く美濃で囲う、みたいな感覚かも!もちろん、インディアンズを組ませないように相手が指し回すことも可能だからネ!この辺は、ノーマル四間だって鷺宮定跡、46銀急戦、45歩早仕掛けの舟囲い急戦に気を使ったり、対振り持久に対して藤井システムを見せたり、と心づかいのあるところとも似てるのカナ?将棋はよくわかんないや……

 なんで『インディアン』って言うかって奏さんに聞いたら、「昔、インドのチェスは1マスしか動けなかったの。それにちなんで、2マスポーンを突きだすことが多いオープニングで敢えて1マスしか突かないオープニングに、インディアンという名前が冠されることが多いわね」って言ってたよー。

 キングズ・インディアン・ディフェンスというと、1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7の方がメジャーなラインで、これをイメージする人も多いのカナ?(Fig.1.2)

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(Fig.1.2 King's Indian Defense : 1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 まで)

 でも、インディアン~と付くオープニングは総じて、先手または後手の陣形が要件を満たしていればそう呼ぶことが多いから、本譜の黒も参考図(Fig.1.2)の黒番と同じ構えを築いていて、これはキングズ・インディアン・ディフェンスだね!頭文字をとってKIDと略したりするよ!KBYDじゃないから、間違えないでね!

 ちなみに、キングズ・インディアン・アタックっていうのもあるんだよー。こちらは白番の以下の様な陣形を言うんだ!手順一例は1. Nf3 2. g3 3. Bg2 4. 0-0 5. d3 6. Nbd2 7.e4、だよ!これはKIAって略すんだ!

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(Fig.1.3 King's Indian Attack : 1. Nf3 2. g3 3. Bg2 4. 0-0 5. d3 6. Nbd2 7.e4 まで)

 さてさて、本譜に戻ろうか。4. d4 0-0 5. e4 d6と、黒はやっぱりソッコーでキャスリングしたよ!ちなみに、KIDはウチの事務所だとノノちゃんが得意な形だね~、KIAは奏さんが1. Nf3のツカルトート・オープニングから合流させてよく使ってるイメージあるなぁ?フィアンケットを組み、キャスリングを済ませた黒番に対して、白はc4, d4, e4と遠慮なく大模様を張って、(Fig.2.1)ってところだね!歩兵隊に騎兵隊が綺麗に整列して、戦意満々って感じの白陣だよー。

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(Fig.2.1 : Fig.1.1 ~ 4. d4 0-0 5. e4 d6 まで)

 最終手のd6は、KIDを指す上で絶対、とも言えるくらい大事な手で、これはe5からの反撃を狙っているんだよ!

 6. ... e5に7. deとすると、黒も7. ... deとして、勢いついて白が8. Nxe5とポーン得に飛びつくと、 8. ... Qxd1+とクイーン交換を迫り、9. Nxd1 Nxe4と進めて、早々に盤上からお互いのクイーンが退場、せっかく突いて作ったc4~d4~e4のポーン・ファランクスが吹き飛んで、ドロー率も高い局面になるとこれは白にとっては不満も不満ってカンジだね!9. Kxd1は黒だけキャスリングしている局面で白がキャスリング権を放棄するようで嫌だし。最後のナイトの跳ね出しはeファイルを一掃しながら、Bg7がホワイト・ナイトを睨んだ味の良いムーブだねぇ。

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(Fig.2.2 : 柚のいう、Fig.2.1 から6. ... e5 7. de de 8. Nxe5 Qxd1+ 9. Nxd1 Nxe4 まで)

 こういう手があるから、ハイパー・モダンは成り立つんだね!だからこの黒からe5の突き出しは、白は手抜いてキャスリングをするのが定跡だね。本譜もそうで、以下6. Be2 e5 7. 0-0 Nc6 8. d5 Ne7 9. Nd2 Ne8と進んだね。

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(Fig.3 : Fig.2.1 ~ 6. Be2 e5 7. 0-0 Nc6 8. d5 Ne7 9. Nd2 Ne8 まで)

 白のdポーンは黒のe5の突き出したポーンが当たっていて居心地が良くない、だからいつかd5と突いて攻撃を逸らしておきたいのだけど、これは黒が右のナイトの活用を図ってNc6と出て来る瞬間、ナイトを攻めながら突き出すのがタイミング良いよネ!9. ... Ne8はBg7のディアゴナルを通しながら、センターで陣を張る白のポーン・チェインを根元から瓦解させるf5なんて手を視野に入れている手だね!フレデリカさんが言ってた、『ポーン・チェインは下を狙え!』ってヤツだねぇ。ハイパー・モダン独特のバランス感覚で、ギリギリの序盤が進んでいくよ、ゾクゾクするよね!

 ここからはサクサク行くよ!前回の青嶋サンのゲームは、序盤に観て欲しいポイントがあったんだけど、今回はエンドゲームで見せたいところがあるんだよ!進行はまず、10. b4 f5 11. c5 Nf6 12. f3 f4 13. Nc4 g5だね。

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(Fig.4 : 10. b4 f5 11. c5 Nf6 12. f3 f4 13. Nc4 g5 まで)

 13. Nc4は面白い手だね!白のナイト多伝だって!両者dファイルeファイルの覇権を狙いながら、巧妙にポーン同士の衝突を避けて、いつしか第4ランクにポーン・ファランクスを築いた白陣に対して、黒はキングサイドにポーン・チェインを作り圧力を掛けているよ!c8に居るビショップ、一歩も動いていないのに黒はポーンの働きだけでダイアゴナルを整備して、これは黒に楽しみがありそうな展開?ここから本譜は14. a4 Ng6 15. cd cd 16. Nb5 Ne8 17. Bd2 h5だね。

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(Fig.5 : 14. a4 Ng6 15. cd cd 16. Nb5 Ne8 17. Bd2 h5 まで)

 15手目でようやく初めてのピース交換が起きるけど、これはどちらもcファイルをオープンで手にしながら、ポーン・チェインが崩れていないところに注目してほしいかな。ピースの打ち直しが出来ないチェスにとってはピース交換ってこんなに神経を使うものなんだって!14. a417. ... h5はスペース・アドを取りに行く手だね。17. Bd2ではビショップ無双が白陣にできてる!ビショップ・ペアは盤面支配力が非常に高いから、手自体は価値の高い手だよね!白の白マスビショップは、現状働きがあまり良くないから、タイミングがいいかはわからないなぁ。

 ここからは、18. Be1 a6 19. Nc3 Nf6 20. a5 g4 21. Nb6 Rb8 22. Nxc8 Qxc8 23. Rc1 Qd7とすすんだよ!

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(Fig.6 : 18. Be1 a6 19. Nc3 Nf6 20. a5 g4 21. Nb6 Rb8 22. Nxc8 Qxc8 23. Rc1 Qd7 まで)

 手として21. Nb6はいいフォークに見えるけど、ナイトとビショップの交換を果たしてみると22. Qxc8がナイトを睨んだ先手になっていて、手番が速やかに黒に渡っていてナントモ、って感じなんだよね。それもこれも、18. ... a6から上手く黒が嫌味をつけて誘導したような流れを感じて。23. ... Qd7は明らかにお互いのピースが利き合ってキューバ島のようになっているg4のマスに手順に利きを足しているネ!

 続きの進行は、24. Na4 g3 25. h3 Nh7 26. Nb6 Qe7 27. Rc3 Qh4 28. Bd3 Ng5 29. Qe2 Rf7だね。

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(Fig.7 : 24. Na4 g3 25. h3 Nh7 26. Nb6 Qe7 27. Rc3 Qh4 28. Bd3 Ng5 29. Qe2 Rf7 まで)

 白はナイトを端に使うNa4から、好位置のクイーンを追いに行ったよ。黒番のアンドレアスは、ナイトを機敏に使ってポイントを稼いでいるね!手損よりも局面として価値を高める手を優先しているカンジ!常識にとらわれない、見習いたい指し回しだよネ!Bd3~Qe2と、白はバッテリーを組んで黒のクイーンサイドの攻略を目指しているよ!b5の突き出しから開戦するつもりだねー。

 ここからは、30. b5 Nf8 31. ba ba 32. Bxa6 Nfh7 33. Rc8 Rf8 34. Rb8 Rb8だね。

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(Fig.8 : 30. b5 Nf8 31. ba ba 32. Bxa6 Nfh7 33. Rc8 Rf8 34. Rb8 Rb8 まで)

 そして、こうやって35. Qc2 Nxh3+ 36. gh Qxh3と。

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(Fig.9 : 35. Qc2 Nxh3+ 36. gh Qxh3 まで)

 ナイト・サクリファイスでクイーンをキングサイドに貼り付かせることに成功したよ!このクイーンはエンドゲームの拠点になる、良い位置にいるね。以下は、37. Bc8 Qh4 38. Bf5 Ng5 39. Bb4 Bf8 40. Qg2 Rb7だね。

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(Fig.10 : 37. Bc8 Qh4 38. Bf5 Ng5 39. Bb4 Bf8 40. Qg2 Rb7 まで)

 Rb7は、ナイトの利きから逃げながらルークを活用させようという渋い一着だよ。このルークを使おうとした理由は直ぐにわかるからね!41. Rd1 Rc7 42. a6 Rc2と進んだんだ!

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(Fig.11 : 41. Rd1 Rc7 42. a6 Rc2 まで)

 巧いルーク・サクリファイスだね!クイーンの利きをf3のマスからずらしているんだよ!こういう手、奏さんと文香さんの特番でも出てきてたよね!あれはビショップが滑り込むマスからクイーンの利きを外すルーク・サクリファイスだったカナ?以下は、43. Qxc2 Nxf3+ 44. Kf1 Qh1+ 45. Ke2 Nd4だよ。

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(Fig.12 : 43. Qxc2 Nxf3+ 44. Kf1 Qh1+ 45. Ke2 Nd4 まで)

 連続チェックのコンビネーションで斬りこみ、fポーンとgポーンのプロモーションを目指しているんだね。それにしても、このナイト、凄いよね……最期はクイーンとキングにダブルアタックを仕掛けて華々しく散ったんだね。ところで、h1のマスにクイーンがいて、プロモーション目指してfポーンとgポーンがまっしぐらって、白番アイからするとものすごく厭な予感がするんだけど……

 以下進行は、46. Rxd4 f3+ 47. Kd3 f2 48. Kc4 f1=Q+

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(Fig.13 : 46. Rxd4 f3+ 47. Kd3 f2 48. Kc4 f1=Q+ まで)

 うん、うん。そうだね。このクイーン怖いなぁ……。

 49. Rd3 g2 50. Kb5 g1=Q!と進んだよ。

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(Fig.14 : 49. Rd3 g2 50. Kb5 g1=Q! まで)

 ほらやっぱり!!クイーンが三つ、これはなかなか見られない光景だよ!

 これをさっき事務所でならべていたら、通り掛かった文香さんが、「左から、シャーロット、エミリー、アン、でしょうか……」って言ってたけど、なんだったのカナ?

 

??「好形の光景……ふふっ」

??「楓さん、お仕事いきますよ!」

 

 以下はこんな感じ!

51. Nc4 Qff2 52. Qb3 Qb1 53. Kc6 Qxb3 54. Rxb3 Qc2 55. Rg3+ Qh1 56. Kb4 Qa1 57. Ra3 Qd4 58. Rc3 0-1

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(Fig.15 : 投了図は 51. Nc4 Qff2 52. Qb3 Qb1 53. Kc6 Qxb3 54. Rxb3 Qc2 55. Rg3+ Qh1 56. Kb4 Qa1 57. Ra3 Qd4 58. Rc3 0-1 まで)

 55. Rg3+は思い出チェック、とでもいうのカナ?相手番投了も、チェスでは何の問題も無いんだよね!投了も一手と考える将棋では、マナー違反だったカナ?真部先生と豊島先生の対局のエピソードなんかに伺えるよね。

 

 今日はちょっと長めだったけど、どうしてもこのエンドゲームがみんなに見て欲しくて!質問メールを読んで終わるねー。今日は「編みぐるみぴにゃこら太」さんからだよ!あはは、出来上がるまでに何回ぐさぁーってされてるんだろ!

 

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もともとフリスクのみなさんのチェスとの出会いはドラマのお仕事、という話でしたが、そのドラマはどうなっているんですか?

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 んー、なるほど!確かに、気になるよね!今いろいろスケジュール摺合せ終わって、この前撮影に入ったんだよ♪そろそろポスターとかできちゃったりするのカナ?みんな楽しみにしててね!

 

 さて、今日紹介するのはこちら!

――タクティシャンは、何かしなくてはいけない時に何をするべきか知らなくてはいけない。ストラテジストは、何もすることがない時に何をするべきかを知らなくてはいけない。

 これは、タルタコワの言葉だよ。タクティシャンはタクティクスの、ストラテジストはストラテジーの使い手、ってところカナ。タクティクス、っていうのは『戦術』のことで、特に短期的だったり局地的な見通しのことカナ?反対に、ストラテジーは長期的な『戦略』のことだって、大和さんがさっき教えてくれたんだ!

 じゃあ、また会おうね!喜多見柚でした~、バイバイ!

 

(続く)