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第2回 綾瀬穂乃香の早わかりチェス講座[オープニングの理論その2](カロ・カン・ディフェンスを考える2)

 

 こんにちは。『綾瀬穂乃香の早わかりチェス講座』です。2回目の今日は、前回に引き続いて、カロ・カン・ディフェンスについてです。

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 ……柚さん、ハジけてましたね。全部を解説するとやっぱり長くなってしまうし、重要なポイントが伝わりにくくなっちゃうキライもありますよね。その点でああいったアプローチはわかりやすいなぁと思いました。青嶋先生の名言は絶対他に何かありましたよね……?え?なかった?ほんとですかぁ?

 

 それじゃ、始めましょうか。

 まず前回の振り返りをさらっとやりますね。

 キングズ・ポーン・オープニング(1.  e4) >> セミ・オープン・ゲーム >> カロ・カン・ディフェンス(1. ~  c6) >>カロ・カン・ディフェンス・メインライン( ~ 2.  d4  d5)

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(Figure.1 Caro-Kann Defense Main Line: 1.  e4  c6  2.  d4  d5まで)

 と、ここでの分岐をやっていたんですね。前回はここから、

(1) 3.  e5 から始まるアドヴァンス・ヴァリエーション

(2) 3.  exd5 から始まるエクスチェンジ・ヴァリエーション

 について触れさせてもらいました。今日は、

(3) 3. Nc3 から始まるクラシカル・ヴァリエーション

(4) 3. Nd2 から始まるモダン・ヴァリエーション

 のふたつについてやっていきたいと思います。

  •  クラシカル・ヴァリエーション

 まずクラシカル・ヴァリエーションから見ましょうか。3. Nc3 de  4. Nxe4  Bf5  5. Ng3  Bg6と進みます。結構最近までカロ・カン・ディフェンスのメインラインといえばこれでしたね。今もでしょうか。ただ、クラシカル(古典的)と差別化されたということで、後述するモダン・ヴァリエーションが流行りつつあるような感じがしますね。

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(Fig.1.2.1 Classical Variation : 3. Nc3 de  4. Nxe4 Bf5  5. Ng3 Bg6まで)

 簡単な手の解説をしますと、白の3ムーブ目Nc3は黒がdeと取り込んでくるのを見越して用意した手ですね。交換して白はeファイルをハーフ・オープンとすることにせいこうしますが、ナイトに当てながらビショップを中央に活用するBf5は黒にとっても味良い手です。ところで4ムーブ目黒はNd7なんて手も見えますね。

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(Fig.1.2.1.1 : 3. Nc3 de 4. Nxe4 Nd7まで)

 これはこれである手だと思いますが、ここで白にはハメ手を仕掛ける筋があるんですね。4.  Qe2がそれです。これは次に5. Nd6#が決まればチェックメイトでゲームセットです!eファイルにクイーンの縦の利きを用意したことで、Nd6のチェックに対してedと取れないんですね。 

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(Fig.1.2.1.2 : Qe2 ~ Nd6のハメ手の筋。黒の4ムーブ目Nd7がキングの動きを封じているというのを逆手に取った手である)

 なのでこの展開になると黒はe6と突くかNdf6とナイトを2段階使ってくると思いますね。e6の方が積極的に指したい手でしょうか。ビショップとクイーンの斜めの利きを通しますからね。白としてはクイーンを早々に動かしてしまったことと、相手のキングを睨み続けることを天秤に掛けつつ陣形を整備する展開になりそうですね。同様のハメ手の筋は黒の4ムーブ目がNf6のときも使えますね。うっかり黒が続けてNbd7とした瞬間にNd6でチェックメイトです。ハメ手を狙わない普通の展開にするのでしたら、白はQe2に代えて、Nf3 や Bc4と中央にマイナーピースを活用するのがセオリーでしょうね。カロ・カンを指す側は狙ってみたいですし、受けて立つときは気を付けたい筋ですね。

 

 本筋の進行に戻しますよ。6. h4 h6 7. Nf3 Nd7となりますね。白番は6~7ムーブの手順前後は別に気にしなくてもいいです。hファイルのポーンを突くのが不思議ですか?ふふふっ、私も最初見た時はそう思いました。一緒ですね。

 この手の白としての思想は、『いま私が手番を握っているんだから、盤面を有利にしながら手番を握り続けたい!』というところです。すると、h4と突かれると黒はh6と応じざるを得ませんから、黒に手を限定して強制しながら、スペース・アドバンテージを取りつつ手番も握り続ける、という流れが見えてきませんか?微差でも、有利を握ったら拡大しよう、というこの考え方はチェスの色んなところで参考になりますから、ぜひ、手に困る様なときに覚えておいてくださいね!私とのお約束です。

 黒番7ムーブ目のNd7は半ば必須の一着です。というのも、e5の地点を支えておかないで、例えばe6を突いたりすると、白は次にNe5と跳ねる手があり、これに対してはh5のポーンを突いてしまったが為にBh7と押し込まれてしまいます。このナイトはとても働きがいいですし、手番も白だとちょっとやる気がしないですね。ビショップを逃げず、交換を迫ろうとQf6と出たりするのは最悪の手ですよ!白はBg5と出ればビショップかクイーンをとれますからね……!

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(Fig.1.2.2 : 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7まで)

 

 白としては、e5にナイトが跳ねられなくてもやることは変わりませんね。g6の黒ビショップを苛めながら手番を握り続けたいと思います。……え?私に苛められたい……?だ、だめですよそんな……な、なにをいうんですか!

 ……えと、とりあえずそんなわけで8. h5と大きくキングサイドにスペース・アドバンテージを握りながら手番を手放さないようにしましょうか。黒はBh7ですね。

 ここでは勢いに乗って更に厳しく責め立てたいと思います!……え?わわ私に責められたい……???みなさんよくわかりませんね……。黒が散々手数をかけて引いたビショップに、こちらは1手で交換を迫りましょう。交換するピースの価値が一緒なら、駒の損得はありませんが、その局面に至るまでの手数如何では『手得』を握ることができます!9. Bd3 Bxd3ですね。ここまで動かしますよ。

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(Fig.1.2.3 : 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3まで)

 交換するためにぶつけたのですから取りましょう。ここで取る手はcdとQxd3がありますが、どちらがいいと思いますか?

 これは気分とか感覚ではなく、Qxd3の一手ですね。というのは、cdと取り込んでしまうとこのポーンは進めませんし、このためいちいち陣形整備の邪魔になってしまいます。ダブル・ポーンと言われて縦に二つ並ぶポーンは嫌われることが多いですが、それがセンターにいるのはとても宜しくないですよね。

 黒番としては最近はこのタイミングでe6が一般的ですね。Ngf6もある手かなぁと思いますが、急ぐ必要も感じない局面ではありますね。白はBd2Bd4ですね。Bd2は遅い攻めの様にも見えますが、既にある手得と、キャスリングをしてセンターを巡る戦いに備える選択肢が増えるということを考えて渋い手だと思います。キングサイドに白がポーンを突き越してスペース・アドバンテージを握っていることを斟酌してあげれば、黒はQc7と出てクイーンサイドにキャスリングを目指しながら、白陣を睨んでみたいですね。手順の前後はあっても、白はこの辺りでキャスリングを入れておきましょう。

 進行一例は10. Qxd3 e6 11. Bf4 Qa5+ 12. Bd2 Qc7 13. 0-0-0 Ngf6といったところでしょうか。Bf4とBd2の手順前後は、黒としてはクイーンが動かずともNgf6の展開が可能になる、という差が出ますね。それを嫌がるか、それとも例示の進行のように一度チェックを入れられるのが嫌かは棋風だと思います。私は嫌ですね。

 ちなみに、キャスリング棋譜に記入するときの0の数は、ルークが動いたマスの数ですよ。

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(Fig.1.2.4 : 10. Qxd3 e6 11. Bf4 Qa5+ 12. Bd2 Qc7 13. 0-0-0 Ngf6まで)

 

  • モダン・ヴァリエーション

 最後に、モダン・ヴァリエーションについて触れますね。

 白の3ムーブ目Nd2という手は、黒の3ムーブ目がde以外だった場合、特に、g6~Bg7とフィアンケット速攻を狙ってくるような場合ですね、c3とポーンを突けるので良い手になる、という概念から生まれた手です。しかしまだまだ、大体この進行になると黒の3ムーブ目はdeですから、正直なところクラシカル・ヴァリエーションとモダン・ヴァリエーションどちらを選ぶかは、好みでしょうか。感覚的に、Nf3とキングサイドで中央にナイトを使う手と比較して、Nc3とクイーンサイドのナイトを第3ランクに使う手が感触よくない、と思うプレイヤーは結構いるみたいですね。あずきさんも、「cポーンを突いてない状態でのNc3は歩越しの桂馬みたいでいまいち使い辛い」と言ってましたね。

 それ以外の点では、各局面での考え方はクラシカル・ヴァリエーションとほとんど同じです。Nd2がNc3よりも劇的に良くなるような進行が見つかったら、面白いなぁと思います。私はクラシック・バレエをやっていたから……というわけでもありませんが、クラシカル・ヴァリエーションの方が安心してプレイできて好きですよ。 

 

 

 前回、今回と紹介してきたように、カロ・カン・ディフェンスはハメ手の筋を多数含んでいながらも、使用するプレイヤーが望めば比較的穏やかな進行になりやすい定跡です。初級者から上級者まで広く使える戦型だと思いますし、こういった緩急をつける能力を問われるような定跡は、バレエに通ずるものがあるような気もして、楽しいなぁと思ってます。

 

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穂乃香ちゃんらしいですね

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 えへへ、そうですかね。もっともっと、自在に盤上で踊れるように、頑張りますね!

 

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最後におたよりを読んだ後、締めの言葉で終わりましょう

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 わかりました。えーと、これですね。「穂乃香ちゃんの黒タイツになりたい」さんから……ってこのネームはなんですか、もう!あ、今日は黒ストッキングですよ~。

『穂乃香ちゃんこんにちは!好きなチェスプレイヤーとかいたら、その理由や好きなところなんかも含めて、お願いします!あと、「~~が好きです」とちゃんと言ってもらえると、編集して着信音や目覚まし音にするのに捗るのでお願いします』

 ですって。メールありがとうございます。……タイツにはしてあげませんよ?

 

 私が好きなのは、アレクサンドル・アレヒンですね。1946年に亡くなったロシアの選手です。「盤上の詩人」と呼ばれるくらい感性豊かな棋風だったことで知られているんです。前回、ブタペスト・ディフェンスが好きと言いましたが、それはアレヒンの棋譜を見たことがきっかけでした。こんな感じでいいですかね?

  最近知った言葉で……どこだったかな、アイルランドかな?の諺を今日は紹介しますね。

――チェスのゲームが終わったら、ポーンとキングとは同じ箱に片付けられる。

 私たちが決めているだけで、ホントは価値に貴賤などないのかもしれませんね。ゲームが終われば、盤上で戦っていた相手ももはや敵ではなく、長い時間向かい合い、深いところで語り合った大事な友人です。チェスとの出会いは、人との出会いを通じ、あなたの世界を広げるかもしれません。綾瀬穂乃香でした。

 

(続く)