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愛とは、全人生をかけてアイドルにチェスを教えること。

フリルドスクエアと行く、奥深いチェスの旅。

速水奏の映画メモ(『3月のライオン 後編』)

水奏の映画メモ

イドル・速水奏。カルペ・ディエムとは「その日を摘め」「その日を掴め」という意味だったか、我々は日々移ろいゆく彼女の魔性の輝きから、刹那たりとも目を離すことを赦されていないのである。

 女の魅力は、多彩な表現力に負うところもひとつあるだろう。そして、アイドルとして、また女として、その研究に余念のない彼女の感性を涵養してきたのが、彼女の趣味である映画鑑賞だ。

 本誌屈指の人気コーナー、『速水奏の映画メモ』。今日の速水も、その腕を掴まなければ――

 (文責・鷺沢文香)

 

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 こんな話を、知っているかしら。馬には角がある、という話。

 ある人の師が、弟子に問うたの。「馬には角がある。君には、それが見えるか」と。

 それを聞いた弟子はどう答えたか。「角があるなら、見る必要はない」、と答えたというの。禅問答、と所謂呼ばれる中のひとつの話よ。

 

 なぜ私が、この話を引き合いに出したのか、わかるかしら?うふふ。

 西洋と東洋の違いって、いろいろとあると思うの。でも、その中でも特に大きいのが、精神性なのかもしれない、と思ったことがあるわ。聖書に始まる西洋世界観は、神が「光あれ」と言い、そうして光と闇があるところから始まるでしょう?つまり、最初から『分かれ』ているの。分けることは、分かることの先駆け。つまり、彼らにとってはそれこそ物事を理解する根幹なの。

 対して、我々の生きる東洋では、『渾沌』というのが中国の古い哲学に登場する様に、光も闇も別れる前のありのままから出発するの。

 最近、チェスと将棋の違いを通して、そんなことに意識が向かってしまうの。

 そうして、インディビジュアルを大切にする西洋世界観では、たとえばひとつ、限りなく曖昧で、普遍的な問いがあるとするじゃない?そうね、『なぜ生きるのか』というようなものかしら。それに対して、十人十色の解答を尊重する、という趣は確かにあると思うの。

 では、均質化、だとか、『叩いて均す』とか、『出る杭を打つ』なんていわれる日本的世界観が彼らより果たして劣っているのかしら?と81マスの木の盤に問い掛けたとき、何が見えるのかしら。

 その答えをひとつ、私はこの映画を観て手に入れた気がしたの。

 

 前置きが長くなってしまったわね。今日、紹介するのは『3月のライオン 後編』。前々回の「映画メモ」では『前編』を紹介させてもらったけれど、その続きよ。

 私が掴んだ答えと言うのは、この映画の最後のシーン。山形県山形市にある、宝珠山立石寺の、険阻な山岳の中に浮かぶ舞台で、獅子王戦番勝負を宗谷冬司獅子王(加瀬亮)と挑戦者・桐山零六段(神木隆之介)が戦うシーンなのだけれど、この荘厳な景色の中に浮かぶ仏教寺院が、人間の感情を超越する為に切り出された場所にわざわざ設けられたと悟ったときに、直感したのよ。東洋世界観では、問いに対して婉曲的な答えを用意することで、その答えに行きつくまでの過程を自分たちの中に探させる。そこに多様な奥行が生まれて来るんじゃないかしら、って。

「君は、将棋、好きか」

「はい」

 これは、家族の葬儀で、父の友人・幸田柾近(豊川悦治)が、幼い零に問い掛けたときの遣り取り。この遣り取りは映画全編を通じて登場しては、零を時に勇気づけ、時に傷付ける。

 でも、師匠・幸田がタイトル挑戦を決めた弟子・零に着物を仕立ててやるシーンで、幸田は「あのとき、零は、嘘をついたんじゃないかと、ずっと思っていた」と言うのだけれど、その後、「ようやく安心できる」というのね。嘘で将棋が好きという程度では、ここまでやって来られないから、いまこうしていることこそが答えなのだ、と。そうして「将棋が好きだ」と答える零の笑顔がまたなんと素敵か……。

 同じように、答えが先行する茫漠とした問い掛け、というのがいくつかこの作品には出て来るのだけれど、その一つが、同じく幸田と、その娘・香子(有村架純)の遣り取りね。

 不倫の関係にあったプロ棋士・後藤正宗九段(伊藤英明)には病床に臥せる妻がいて、彼はそれを表に出すことなく戦い続けていたのだけれど、妻を亡くした後は「俺は宗谷から獅子王を取り戻したい」と言い、やっと将棋に集中できるから、と香子を部屋から追い出すの。その後、酔って自宅に帰って暴れ管巻き、「すべて将棋に奪われた!」と泣き笑う香子に対して、後日父親である幸田が言うのは、

「将棋は、誰からも、何も奪ったりしない」

というセリフ。それを聞いた香子からはらはらと零れていく涙にこそ、紆余曲折を経て、それでも少しでも前に進む一手を探そうと悶え続けた時間の重みを観るような気がしたわ。

 

 前編からの繋がりを浚うと、新人王戦で優勝し、見事新人王に輝いた零は記念対局で宗谷冬司に挑むことになる。同期して、川本ひなた(清原果耶)が学校でいじめられていることが発覚、なんとか力になりたいと願うも、学校側の乗りだしでいじめが自然消滅し、それを喜びながら自分では何もできなかったと悔いる零。そんな折、川本三姉妹の父親を名乗る男(伊勢谷友介)が川本家を訪れ、彼女たちと一緒に暮らすことを提案するが、実は彼は他の女性との間に子供を作り過去に姉妹を捨てた人物だったの。自分の大事な人たちを守るために強くなりたい、そんな思いで獅子王戦トーナメントに臨む零だったけれど、裏目に出て姉妹を傷つけてしまう。深い後悔と遣る瀬無さの中で、改めて「自分には将棋しかない」と遮二無二になって向き合う零は鬼気迫る強さすら見せてトーナメントを勝ち上がる。決勝では後藤九段と対局し、後藤の深い研究を破っての逆転勝ちを収めるわ。そのプロセスで、零は自分の愛する人たちと改めしっかりと向き合うことを自分に課し、終局の足で川本家に向かうの。傷つけてしまったことを詫びる彼を優しく出迎える姉妹は、零の感化を受けながら自分たちで「前に進む一手」を捻りだし平穏を取り戻していて。一方で敗れた後藤を待ち伏せした香子が「何で負けたかわかる?アタシを大切にしなかったからよ」と後藤に告げた後、二人は腕を組み後藤のマンションに吸い込まれていく。映画は、師匠に誂えてもらった和服を身に着け宗谷獅子王との対局に臨む零が着座したところで終了。

 

 いじめられた子を庇ったが為に、自分に矛先が向いてしまったひなた。彼女が涙ながらに「でも間違ったことをしていない」と叫んだ時に、同じくいじめを受けていた過去を引き摺る零は救われたのだ、とあかり(倉科カナ)に告げるシーンがあったわ。このときのあかりの、「ありがとう」と呟く瞬間に右の眦から溢れた涙が零れ落ちるシーンは素晴らしかったわね。なんて素敵な演技が出来る女優さんなのかしら、と思わされてしまった。最初に送った履歴書はフリーペーパーをちぎったもので、碌なモノではなかったというエピソードを持つ彼女。見出した人の眼は確かだったのね。

 獅子王トーナメント決勝を勝った足で川本家に出向いた零。ずっと暗いところで、一人で戦っていたという零の汗と涙に濡れる横顔が、川本家から漏れ出た暖かな光に包まれていくカットはそれだけで感涙。

 私は、対局中に妻が亡くなったことを知らされ、途中2時間の離席の間に病院を訪れ、妻の死に顔を見、ひとり慟哭した後再び勝負師として対局場に戻った後藤九段の男気にも、強い感銘を受けたのよ。零との決勝の終局時、勝ちながら泣く零を「泣くな。みっともない」と喝入れる声音は今までにないくらい優しく響いて、負けながら初めて劇中笑顔を見せた伊藤英明という俳優の演技の度量には、正直舌を巻いたわ。

 島田八段(佐々木蔵之介)や二階堂四段(染谷将太)といった、零を陰ながら支え続ける面々の暖かい演技も然ることながら、俳優の技量が光ったといえば何と言っても家族を捨てた男を怪演した伊勢谷友介かしら。自分勝手とコンプレックスの端境に立ちながら相手を的確に怒らせる人柄なんて、怖いくらいに自然で素晴らしかったわね。

 

 零の子ども時代の回想シーンで、2015年に初版が刊行された飯島栄治の『相横歩取りのすべて』が積まれている、とか、棋士が指したにしては駒音が軽すぎる、だとか、みんな着手がとにかく早い、とか、そういう疵も確かに将棋映画としてはあるけれど、それ以上に群像映画としてひとつの完成形を我々は観ることになるのではないかしら。光の採り入れ方、水の使い方といった監督・大友啓史の計算され尽くしたカメラワークは必見。また、名優たちの表情筋と喉仏がとにかく動くところを、私は特によく観て欲しいと思ったわ。

 

 将棋というのは――将棋に限った話ではないかもしれないけれど――二人で行うゲームのはずなのに強くなればなるほど、一人で向き合う時間が長くなるものだ、と聞いたことがあるわ。そして、その時間が取れない者が強くなることはないのだ、とも。

 単なるボードゲームを超えて、民族の精神性すら象徴する深遠な伝統を誇らしく思える、そんな5時間だったと感じたから、この映画は本当に、将棋が好きになりたいあなたと、将棋を好きでいたいあなたにこそ薦めたい。ハッピーエンドより、過程を楽しみましょ。あなたにしか指せない将棋じんせいが、あるはずだから。

 

 

 

幕間:チェスゲームは雪解けの調べと共に

 

宮本フレデリカ「……」

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フレデリカ「……」ハァ

 

???「どうしたの、そんなに辛気臭い顔しちゃって」

 

フレデリカ「あ……奏ちゃん」

 

速水奏「敗戦の痛手、ってところかしら。らしくないわね」

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フレデリカ「えっへへー、そんなんじゃないよ」

 

奏「そう。ならいいのよ」

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フレデリカ「やっぱ、らしくないか~……ところで、フレちゃんらしさ、ってなんだろうね?」コトン

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奏「……さぁ?知らないわよ、そんなの」スッ

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フレデリカ「……んー、奏ちゃん冷たいなぁ?」

 

奏「逆に何か、言葉が欲しいのかしら?」

 

フレデリカ「こーいうときはさ、優しい言葉を掛けてくれてもいいんだよ~」コトン

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奏「……私は、そんな物騒なもの、扱ってないの」スッ

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フレデリカ「むふふ、奏ちゃんらしいや」トッ コトン

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奏「……そうかしら?」スッ

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フレデリカ「アタシからチェスをとっちゃったらさ~、ただの様子のおかしい可愛いフランス人になっちゃうよ~」スッ コトン

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奏「……意外と大丈夫そうねアナタ……」スッ スッ

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フレデリカ「実際、最近本気で戦って、誰かに負けたのって久しぶりでさ~……ちょっとわからなくなってるのカモ?」コトン

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奏「……」スッ カン

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フレデリカ「なんだろ~、チョーシ狂っちゃうなぁ」スッ コトン

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奏「強がりは辞めにしたら?」ガン

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フレデリカ「……!」スッ スッ

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奏「何がフレデリカらしいか、なんてバカみたい。全部ひっくるめてのアナタでしょ」スッ カタン

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フレデリカ「……」スッ コトン

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奏「でも、少なくとも『何かの所為』にしているのは、貴女らしくない。そうじゃない?」スッ スッ

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フレデリカ「……なんのことかなー?」スッ コトン

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奏「んもう、わかってるくせに。変なトコ依怙地なんだから」スッ

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フレデリカ「フレちゃん、ニホンゴ、ワカンナイ」スッ コトン

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奏「負けたのは、それは、悔しいでしょう。でも、それよりもっと大事なことがあるんじゃない?」スッ スッ

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フレデリカ「……」スッ コトン

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奏「ほら。それが、貴女でしょ」スッ スッ

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フレデリカ「……」スッ コトン

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奏「久しぶりに、ギリギリのゲームをして、昔を思い出しちゃったのでしょう?」スッ スッ

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フレデリカ「……!」コトン

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奏「……フレデリカ、アナタにはやっぱり彼女が必要なのよ」スッ

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フレデリカ「……だって……」コト

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奏「だって、もヘチマもないわ。アナタも世話が焼けるんだから」スッ

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フレデリカ「……?」コトン

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奏「……出てきたら?」

 

????「……」

 

フレデリカ「あ……」

 

鷺沢文香「……」

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奏「じゃあ、私はこれで」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

フレデリカ『ん~、文香ちゃんには、アタシのとっておき、教えちゃう!』

 

文香『……とっておき、ですか?』

 

フレデリカ『とっておき中のとっておきだよ~!なんてったって、フレん家・ディフェンスっていうんだから!』

 

文香『……フレンチ・ディフェンス、ですか?フランス防御、はて……』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

文香「……アナスタシアさんとのゲーム、全部観ていましたよ」

 

フレデリカ「あ、そうなんだ、えへへ。カッコわるいとこ見せちゃったなぁ……」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

文香『……フレデリカさん、お時間宜しかったら、今日も一局……』

 

フレデリカ『おー!文香ちゃん、チェスやる気になってくれたんだネ!』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

文香「……いえ!格好悪いだなんて、そんな……」

 

フレデリカ「フレちゃん頑張ったんだけどなぁ、負けちゃった、えへへ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

フレデリカ『文香ちゃん、筋がイイんだね~!』

 

文香『そ、そうですか?……書を読んで、駒を並べて……こういう時間は、好きなのです』

 

フレデリカ『このままだと、いつか抜かされちゃうかも!』

 

文香『……そ、そんな、私なんてまだまだです。これからもいろいろ教えていただいて……』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

文香「……貴女らしい、良いゲームだったと、思います」

 

フレデリカ「……本当?」

 

文香「えぇ。……貴女らしい、チェスに真っ直ぐな」

 

フレデリカ「……」ポロ

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

フレデリカ『もう文香ちゃんに勝てなくなっちゃったなぁ……』

 

文香『……チェスに誠実で、真摯で、そんな師に教わったから、です』

 

フレデリカ『悔しいけど、フレちゃん嬉しい!文香ちゃんとなら、まだまだ強くなれそうだな~』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

文香「……私が好きだった、あの宮本フレデリカの、チェスでしたよ」ポロ

 

フレデリカ「……」ポロポロ

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

フレデリカ『もー!全ッ然ダメ!こんなバカな手指すくらいなら、指さない方がマシって感じだよ~』

 

文香『……』

 

フレデリカ『こんなんじゃあ全然ダメだぁ!もー、辞めちゃえってくらい酷い手だよ』

 

文香『……そんな、そんな言い方をするフレデリカさんは嫌いです』

 

フレデリカ『……え?』

 

文香『貴女とは、もう指せません。貴女は、私の友人を、罵ったんです』

 

フレデリカ『……ちょ、ちょっと?!』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

フレデリカ「アタシ、まだまだ強くなりたいんだ……」

 

文香「……はい」

 

フレデリカ「アーニャちゃんには完敗しちゃったけど、久しぶりにガチンコで勝負できて、楽しかった」

 

文香「……」

 

フレデリカ「でも、ボードを挟んでたのは、文香ちゃんじゃなかった」

 

文香「……!」

 

フレデリカ「アタシ、まだまだ強くなりたいんだよ~!それで、アーニャちゃんに勝たないと……もう、自分のチェスに背中を向けるようなことはしないからさ……だから……」

 

文香「……」

 

フレデリカ「……また、アタシと一緒に、研究会を、してくれ……ない……かな?」

 

文香「……」スッ

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フレデリカ「……!」

 

文香「……私でよろしければ、また、お願いします」

 

フレデリカ「……文香ちゃん……文香ちゃん!」

 

文香「……わ、私だって、言い過ぎてしまったと、ずっと……思ってて……」

 

フレデリカ「……うあ~!……よかったぁ……」

 

文香「……ひとりで並べるチェスほど、寂しいものもないのだと気が付いたのです……」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

奏「……『心優しいものにチェスはできない』っていうのは、まるきりの嘘かもしれないわね。チェスへの熱では、ロシアの氷も融けてしまうのかしら……なんて。うふふ」

 

(続く)

第4回 工藤忍の実戦チェスチャレンジ[French Defense, Winawer, Bogoljubov Variation](Frederica Miyamoto v.s. Anastasia)

 

 こんばんは。四回目、『工藤忍の実戦チェスチャレンジ』をやっていきたいと思います!

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 いやー……事務所はなかなかすごいことになってるんですよ……。それもこれも、すべて一人のアイドルが移籍してきたことに始まるんですけどね……。

 

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『あの御方』ですね

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 そうです。『あの御方』です。

 

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名前を言ってはいけないあのひと……?

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 いや、そんなことはないと思いますけど。アイドルですしね。

 

 つまり今まで346レーティング1位の座を守り続けてきたフレデリカさんと5戦マッチを組んで、4戦目で3.5-0.5と勝負を決めてしまった、ロシアからの刺客・アナスタシアさんのことだよ。びっくりしたねぇ……。

 フレデリカさんといえば柚ちゃんの師匠だけど、そもそも今まで全力でチェスしてるところも見たことないくらいすごい人だったから、なおさらびっくりしたのかな。ちなみに、穂乃香ちゃんは加蓮さんに、アタシはあいさんと留美さんに師事してて、それからあずきちゃんはよく将棋もチェスも茄子さんと一緒にやってるかな。

 今日はそのフレデリカーアナスタシアのマッチから、第1局目を紹介するよ。白番がフレデリカさん、黒番がアナスタシアさんだね。両者不適に微笑んで、握手。

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(Figure.1 French Defense : 1. e4 e6 まで)

 

「パパはロシアのチェスプレイヤーなの」

 そう言いながらeポーンに手を掛けたアナスタシアさんの初手は1. ... e6。

 これは初手から驚いたなぁ。チェス大国・ロシアから鳴り物入りで入ってきたアナスタシアさんを、346一の実力者であるフレデリカさんが迎撃する、っていう構図だったのに、まさかの出だしだもん。この一手でアナスタシアさんが主導権を握ったといっても過言じゃないんだ。

 アタシはこのとき知らなかったから、変わった出だしだなぁと思っただけだったけど、広くオープニングを勉強している穂乃香ちゃんやフレデリカさんと研究会している柚ちゃん含め、奏さんや文香さん、加蓮さんが色めき立ったのが印象的だったんだ。この出だしでもって、『フレンチ・ディフェンス』や『フランス防御』っていうオープニングなんだ、って後から聞いてやっとみんなの顔色が変わったのがわかったの。これは19世紀、通信チェスでロンドンとパリのチームが戦った際、パリのチームがこれを採用して連勝した、という由緒がある戦型で、いわばそれをフランスの血が流れるフレデリカさんに逆用したってことは、これは完全にアナスタシアさんの挑発だったんだって。

 戦型としては、黒番から1. e4 e5に始まるゲームの展開を避けることができる、という力戦に持ち込みたい場合に採用するような感じなのかな。ただ、e6とすることでBc8にいる黒ビショップの展開が難しくなるから、指す方もかなり力量が問われる戦型だと思うな。だからこれは、きっとアナスタシアさんの自信の表れでもあったんだね。この手を見てフレデリカさんも顔色が変わったんだ。

 

 以下2. d4 d5と進むことが多いみたい。本譜進行もそうだったよ。

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(Fig.2 Winawer Variation : French Defense ~ 2. d4 d5 3. Nc3 Bb4 まで)

 そして3. Nc3とナイトを使ってdポーンを攻める手に、いきなりのピンで応酬するのがヴィナヴェル・バリエーションだね。後手番ルイ・ロペスのような感覚かな?ただ、dポーンが突かれているのを受けてのピンだから、より強気な手といえるのかも。

 両者淀みない定跡進行だけど、既にイニシアティブがアナスタシアさんにあったからか、どこで何を仕掛けてくるかわからなかったからか、ここからフレデリカさんは小刻みに時間を使いながら駒組を続けていくよ。一方アナスタシアさんはどんどんノータイムで組んでいったね。

 

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(Fig.3 Bogoljubov Variation : Winawer Variation ~ 4. e5 c5 5. Bd2 まで)

 この白の5手目でまたギャラリーが熱気を増したんだ。後から加蓮さんに聞けば、この形はロシアで生まれながらドイツで戦ったGM、ボゴリューゴフの名を冠してボゴリューゴフ・ヴァリエーションと呼ばれている形なんだって。フランス防御を仕掛けてきたロシア人に対して、手のひらを叩く様なこれ以上ないやり返しってことなんだね。「あんな強気で怖いキレデリカさん、初めて見た」って柚ちゃんもありすちゃんも言ってたなぁ……。すっと目を細めたアナスタシアさんも何か冷気を放っているような怖さがあって。

 プレイヤー同士の駆け引きとは裏腹に、もうこうなるとギャラリーのボルテージは高まるばかり!って感じだったよ。

 

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(Fig.4 : Fig.3 ~ 5. ... Ne7 6. Nb5 Bxd2+ まで)

 フレデリカさんがNb5とナイトを跳ねた瞬間にアナスタシアさんのビショップが飛び込んできたね。アタシはこの辺で、なるほど、相当アグレッシヴなスタイルのプレイをする人らしいなぁ、って思ったんだ。

 

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 (Fig.5 : Fig.4 ~ 7. Qxd2 O-O 8. c3 Nf5 9. g4 Nh4 10. g5 cd 11. cd Nc6 まで)

 いきなりチェックでビショップ・エクスチェンジを強制したかと思ったら、自分だけさっさとキャスリングを済ませて腰を落ち着けて盤面の主導権を握りにいったり、アナスタシアさんのプレイスタイルは攻撃一辺倒、ってわけでもなくて、緩急というか抑揚というか、とにかくゲームのリズムの組み立てがバツグンに上手なんだなぁ……っていうのが、アタシが数局彼女のプレイを見せてもらった印象ね。

 フレデリカさんも然る者、相手からの仕掛けに乗りながらクイーンサイドでのロングキャスリングを視野に入れつつ、相手のナイトを端に追ったりと細々テクニックを見せてくれているね。桂馬と違ってナイトは八方向に利きがあるでしょう?だからそのぶんだけ、端のファイルに追いやられたナイトは実力が発揮できなくて損なんだ。上手にピースの特性を把握して働かせてあげるのも、プレイヤーの実力……ってことだね。

 

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(Fig.6 : Fig.5 ~ 12. O-O-O Qa5 まで)

 フレデリカさんはロングサイド・キャスリングで開戦に備えたよ。これでお互いキャスリングを済ませ、局面が少し落ち着くかと思った矢先の12. ... Qa5! これはまた激しい手だねぇ。そして今まで通っている後手の主張は全部aファイルから斜めの攻めっていうのも、偶然じゃないよね。針の穴一つあればアナスタシアさんは攻めを通せちゃうのかも?なんて思っちゃうよね。

オポジットキャスリングかぁ」

 こう呟いたのは加蓮さん。加蓮さん曰く、先手後手が別々のサイドにキャスリングする戦型は『オポジットキャスリング』と呼ばれていて、割合は1割くらいとのことだよ。対抗形の方が多いのかな?

 

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(Fig.7 : Fig.6 ~ 13. Kb1 Qxd2 14. Rxd2 まで)

  フレデリカさんは落ち着いてキングを遠ざけたね。相手からエクスチェンジを仕掛けさせて手番を握ろうという意図もあるんだろうね。ここでお互い女王が盤を降りて、組み立ての難しいゲームになったと誰もが直観で理解していたんだ。

 

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(Fig.8 : 14. ... f6 15. gf gf 16. Bh3 fe まで) 

 ダブルポーンも気にしない、っていう取り込み。でもアナスタシアさんから見れば、ダブルポーンの悪形以上に、fファイルがセミオープンになって、早々にクイーンをショウダウンさせているのも手伝って一度も動いていないBc8がうまく働きそうな展開になっているんだね。柚ちゃんがいつだか、『何を指したらいいかわからないときに正しい手をさせることが強さなのカモ?』って言ってたことがあったけど、こういうセンスは見習いたいなぁ。アタシにはここで指すべき手が全然見えない。こういうのが見えたら、強いんだろうなぁ。

 

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(Fig.9 : Fig.8 ~ 17. Nc7 Rb8 18. Nxe6 Rf6 19. Nc7 Bxh3 まで)

 初期配置から動くことがなかったc8のビショップが、この一撃のために輝いた、って感じ?それにしても、こんな風に序中盤でビショップ2つにクイーンと、斜めの利きが消えた盤上でのゲームはホントに難しいんだ。きっとアタシならすぐ攻め潰されちゃう。

「ナイトの舞踏会です。超絶技巧ですね」ってつぶやいたのは穂乃香ちゃん。

 

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(Fig.10 : Fig.9 ~ 20. Nxh3 Nf3 21. Rdd1 ed まで)

 これもダブルポーンだけど、ナイトの利きと合わせて、うまく白のルークを抑え込んだなぁって感じがするね。みんなちょっとフレデリカさんが大変かなぁって顔をしていたけど、柚ちゃんだけは、盤上のゲーム以外に興味がないみたいだった。

 

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(Fig.11 : Fig.10 ~ 22. Nxd5 Rf5 23. Ndf4 Rbf8 24. Nd3 Nce5 25. Nxe5 Rxe5 まで)

 ナイトが1人ずつ盤上から消えて、派手なバレエもひと段落、だね。アナスタシアさんは白のルークを抑え込んでからすかさず自分のルークをうまく活用することで盤面の制海権を完全に握ったんだ。ルークとナイトで、ロシアのアルマータとコサック騎兵みたいだね。

 

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(Fig.12 : Fig.11 ~ 26. Ng1 Ng5 27. h4 Ne6 28. Rh2 Re4 29. f3 Re3 30. Re2 Rf4 まで)

 この波状攻撃はうまいなぁ。騎兵戦の後はパンツァー、フォー!ってところかな。

 

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(Fig.13 : Fig.12 ~ 31. Rxe3 de 32. Rd3 Rxh4 33. Rxe3 Nd4 34. Re4 Rxe4 35. fe まで)

 戦車戦が終結。ここからゲームを纏めるふたりの技術は必見だと思ったんだ。

 

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(Fig.14 : Fig.13 ~ 35. ... Kf7 36. Kc1 Kf6 37. Kd2 Ke5 38. Ke3 h5 まで)

 アナスタシアさんのは、近接見合いを発生させてからhポーンをプロモーションさせに行くっていう、初歩的ながら狡猾なタクティクスだね。いつだってアタシたちに求められているのは、高い精度の基礎なんだ、きっと。

 

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(Fig.15 : Fig.14 ~ 39. a3 a5 40. Nh3 Nc2+ 41. Kd3 Ne1+ 42. Ke2 Ng2 43. Kf3 Nh4+ まで)

 フレデリカさんがナイトに攻められているのをいなしているようで、黒に自分のナイトにhポーンの進路を邪魔させるよう仕向けさせる、っていう巧みな手順だね。強い人は、悪くなってからだって、簡単に土俵を割らないんだ。いうのは簡単だけど、劣勢のゲームで差を広げられないよう食いついていくのって、すごくしんどいことだと思うな。

 

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(Fig.16 : Fig.15 ~ 44. Ke3 Ng6 45. Ng5 Kf6 46. Nh7+ Kg7 47. Ng5 Kf6 48. Nh7+ Ke7 まで)

 両者ともギリギリまで読むために引き伸ばしながらも、スリーフォールド・レピテーションは避けに行ったね。打開の権利が黒にあるようでは。

 

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(Fig.17 : Fig.16 ~ 49. Ng5 Ne5 50. Kd4 Kd6 まで)

 このキングのにらみ合いは対局者同士のそれをシンボライズしているみたい。勝勢の側は決して間違えず、最後の一手まで精確に指し切るために精一杯で、劣勢の側だって一縷の可能性が捨てきれないで、絶望しかなくなるまで戦い続けるために歯を食いしばっているみたい。

「……ナイトの物語が、もうすぐ終わります」そうポツンとこぼした文香さんは、このときもう未来が見えていたのかな。ねぇ文香さん、未来が見えてしまうって、どんな気持ちなんですか。

 

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(Fig.18 : Fig.17 ~ 51. Nh3 a4 まで)

 これも超基本的な手筋だね。壁としてのポーン、相手のポーンの進軍を阻むポーンだよ。……そして、aポーンがお互い動けなくなるということは、ふたりとも指せる手がひとつ減る、ということ。チェスを初めて最初のころに習った手筋だって、もともと指せる手が少なかった側から、未来を確実に奪っていくベラドンナになることがあるんだ。

 

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(Fig.19 : Fig.18 ~ 52. Nf4 h4 53. Nh3 b6 54. Nf4 b5 55. Nh3 Nc6 56. Ke3 Kc5 57. Kd3 b4 まで)

 満を持して、最後にポーンをぶつけに行ったね。

 

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(Fig.20 : Fig.19 ~ 58. ab Kb4 まで)

 玉頭戦、という言葉が将棋にはあるけど、私はそんな言葉を思い浮かべたなぁ。まるで佐藤康光九段の終盤みたい。キングは最強のピース、ってことなんだね。

 

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(Fig.21 : Fig.20 ~ 59. Kc2 Nd4+ まで)

 もたれて指しながらのフレデリカさんの決定打を与えない、のらりくらりとした指し回しもここまでか。フレデリカさんが負けるかも、っていうのよりも、アタシは、読んでいたお気に入りの物語がもうすぐ終わりそうな雰囲気を醸し出しているような、得も言われぬさみしい気持ちになったんだ。

 

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(Fig.22 : Fig.21 ~ 60. Kb1 Ne6 61. Ka2 Kc4 62. Ka3 Kd4 63. Kxa4 Kxe4 まで)

 ついにシベリア方面軍の掃討作戦が始まった、って趣だね。

 

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(投了図 : Fig.22 ~ 64. b4 Kf3 65. b5 Kg2 0-1 )

  あとはどんなに足掻いたって、確かに黒が歩いてきた時間だけが、埋まらない。

 静かにボードの上にキングを倒して、右手を差し出したフレデリカさん、すごく悔しそうで、でも上気した頬はまるで会心のライブ後のように楽しそうで、なにより綺麗だったなぁ。

 

 最初は近寄りがたいかな、って少し遠巻きにされていたアナスタシアさんだけど、今はチェスを通じてもうみんなの輪の中心にいつもいるんだ。深いところで語り合えるチェスは、人と人とを繋いじゃうんだね。

 

 シュタイニッツは、

――私は人生でフランス防御を指したことがない。あれは非常に退屈だ。

 って言ったって伝えられているけれど、アタシはそうは思わないな。特に、こんな激戦を見せられちゃったら、またひとつアタシの知らない世界の扉が開いたみたいでさ!

 みんなは、どう思う?いつか、いろんな人に、チェスセットを通じて問いかけてみたいな。

 

(続く)

喜多見柚の名局好局つまみ食い[Giuoco Piano, Evans Accepted, Pierce Defense / Adolf Anderssen v.s. Jean Dufresne, 1852, Berlin]

 

 咲ーいーてー、キタミキタミ♪やっほ、喜多見柚だよ!

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 最近はずいぶんあったかくなって、っていうかもう夏?!みたいな日もあったりね!みんなは体こわしてない?大丈夫?そーせんきょもいいけど、睡眠もほどほどにとらないとね!

 

 

 今日紹介するのは、これ!エヴァーグリーン・ゲーム、といえばわかっちゃう人もいるかな?ウンウン!

 1852年というと、今から大体……160年くらい前のこと?まだ日本は江戸時代だね!というかまだペリーが来てないくらいの頃じゃないカナ?ちがったかな?そうだよね!エヴァーグリーンとは、『常緑樹』、転じて不滅とか永久とか、そんな意味だよ!

 白番は世界チャンピオンに二度君臨しているアンデルセン。彼は数学者でもあったんだよ!将棋の羽生善治先生は数学が好きだった、って聞いたことあるけど、こういうボードゲームはそういうアタマの使い方をする人にとっては有利だったりするのカナ?それとも、ボードゲームが得意な人ほどスーガクに有利だったり?んー、わかんないナ。志希さんはチェス強いよ!

 一方の黒番はデュフレーンとかデュフレーヌ、って読むんだってフレデリカさんが言ってた!デュフレーンって言えば、奏さんとこの前いっしょに観た『ショーシャンクの空に』に出て来たの頭取もデュフレーンだね!ジャン・デュフレーンはドイツはベルリンの強豪棋士で、多数のチェスに関する名著を残したことでも知られているね!

 

 タイトルで気が付いちゃった人もいるカナ?この前のは公式戦だったから、最後にそのチャンピオンシップの名前が書いてあったけど、今日のは書いてないよねー。これ、アタシが手抜きしたんでも、スタッフさんの怠慢でもないんだよ!昔過ぎて記録が失われちゃった?まさか、このゲームに限ってはそんなことないよ!そうなの、これ、非公式戦なんだ。

 

 一緒に見て行こうか!イタリアン・ゲームからジオッコ・ピアノの出だしだよ。まずはそこまで並べちゃおう!

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(Figure.1 Giuoco Piano : 1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Bc5 まで)

 名前がつけられているものが多くて、つまりとにかく用語がいっぱいあるなぁって思うことって、チェスに限らずあるよね。さっきハナシに出て来たスーガクもそうだし、スーガク以外にもカガクってそうだと思うし!あとは哲学とか文学とか……お料理とかだってそうなのカナ?穂乃香ちゃんにバレエもそうだって聞いたことあるなぁ……。一度に見ちゃうとお腹いっぱい頭いっぱいで『うわぁ』って思っちゃうけど、ひとつずつモノにしていくと案外そうじゃなかったりするんだよね!それになにより、こうやってお互いの理解の上にハナシが出来るのって、嬉しいなぁって。

 エヴァンス・ギャンビットは穂乃香ちゃんの講座でいちど出て来たことがあったっけ!4. b4といきなり黒ビショップに突き出したポーンをぶつける戦型だったね!

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(Fig.2 Evans Gambit : Giuoco Piano ~ 4. b4 まで)

 穂乃香ちゃんの講座では、『ビショップを引きつける手』だって解説されてたね。アタシはその上で、更に自分のウィークポイントであるfポーンからビショップの利きをずらせるならこのタイミングでbポーンを切ってしまっても構わない、っていうすごく強い手だと思うんだ。アタシ?好きだよ~エヴァンス・ギャンビット!柚は何でも指すけどね!相手の駒を逸らすことで自分の駒組みをしやすくして良さを求める戦型、って将棋だと何があるカナ?うーん、縦歩取りとか?あとで茄子さんに聞いてみよ。

 これは取らない手と取る手があって、取る方は多くのオープニングで使われる様に、ここでも『エヴァンス・アクセプテッド』って言うね。本局は堂々デュフレーンが4. ... Bxb4と取ったよ!少し時代背景の説明をすると、19世紀はこうやってわりとゲームの早い段階からお互いポーンダウンをして、盤面スッカスカの終盤で縦横無尽にお互いピースの利きを使いキングを殴り合う、ノーガード・ボクシングみたいなゲームが多かった感じがするなぁ。あ、エヴァンス・ギャンビットは今でも第一線で全然使えるオープニングだよ!

 ポーンを取り込ませ引きつけたビショップにすかさず5. c3 Ba5と。

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(Fig.3 : Fig.2 ~ 4. ... Bxb4 5. c3 Ba5 まで)

 黒の5ムーブ目Ba5は、穂乃香ちゃんがルイ・ロペス講座で言ってた、『手損』の概念を思い出すとわかりやすいかも?相手のポーンを一つ早々にダウンさせて駒得を主張しても、やっぱり一手で出られたはずの場所に引くのってなんだか決まり悪いんだよね……。だから、b4までこないと行けなかった場所に行く、とBa5ってこと!ここはbポーンがなくなった今や攻められ難い、とか、白キングを間接的に睨んでいる、とか、『まぁ、悪くないかな』って位置だよね!

 ここで一発6. d4と行くのがこの局面から大体8割くらいかな?放置すればセンター・コントロールに大きな手、取らせてもピースの展開に大きな手、だね。だからこそ黒としては手抜くのもアリ、とまた選択が迫られているね!6. ... edと取り込んだこのラインでもって現局面をピアス・ディフェンスって言うよ!

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(Fig.4 Pierce Defense : Fig.3 ~ 6. d4 ed まで)

 ここで早くも白はポーン2つの損だね。そのかわりピースがセンターにのびのび展開できるようになっている……っていうのが先手の主張だね。

 で、この白はこのポーンは取れないね。取る手はBa5の所為で自殺手だよ!ピンされている所為でとれないんだから、そのピンを外してしまおう、とキャスリング、対して今度は取りこまれるからそれを避けてd3と進んだね。ちなみに7. ... d3は最近はあまり指さないかな。ナイトを使うNge7の方が感触がいいからね!あとは7. ... dcっていうややリスキーな手もあるよ(コンプロマイズド・ディフェンス)。

 ま、結果的にいうとアンデルセンはこれを咎めにいかなかったので、第3ランクまで攻め込んだポーンは攻撃の拠点として大いに働くね。

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(Fig.5 : Fig.4 ~ 7. 0-0 d3 8. Qb3 Qf6 9. e5 Qg6 10. Re1 Nge7 11. Ba3 b5 まで)

 デュフレーンの11ムーブ目b5はなかなか機敏なサクリファイスだよね。8. Qb3でバッテリーを作ったアンデルセンの狙いはBxf7だもんね。だったらバッテリーを解散させてしまおう、という手だね!10. Re1は見えづらいけど確かな手だなぁって思う。棋風が分かれるところかも?柚はこういう手、好きだけど、たとえば理論家の奏さんとかは『テンポを失ってまで指す手かしら……?』なんて言いそう!あ、テンポっていうのはね、最近事務所に入ったアーニャさん、アナスタシアさんから教わった概念なんだけど、なんていうんだろ。『1回の動き』とでもいうのカナ?つまり、

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(Fig.5.1)

 こーんな風にいま、h1にルークがあるとするでしょ?そして、たとえばアタシはh8(バツ印)に動かすのが『目的』だとするんだ。このとき、すっと1. Rh8と単一の動きで到達できればそれは『テンポを得る』って言って、逆に何らかの事情で途中下車しなきゃいけなかったりして、1. Rh5(黒丸)~2.Rh8と動いたとするじゃない?これは単一の動きでいけたはずなのに……ってことで『テンポを失う』って言うんだ!a1に行きたい柚がd1で降りちゃっても、やっぱり『テンポを失った』柚だよ!あ、わかりやすかったのが、一緒に聴いてたプロデューサーが、「なるほど、つまり新宿駅で降りなきゃいけないのに、お腹が痛くなって途中の代々木で降りた今朝のオレは『テンポを失ったプロデューサー』だったわけだ」って言ってたね!結局、遅刻してきたもんね!

 柚もねー、チェス覚えてから、忍ちゃんや穂乃香ちゃんほどじゃないけど、自分でいろいろ調べたりしてお勉強したんだけど、日本語の本には書いてなかったかも……?ま、そもそも一緒にアーニャちゃんの話を聞いてた奏さんも加蓮さんも初耳だったって言ってたから、チェス大国では当たり前でもこちらにはまだ浸透してないのかもネ!

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(Fig.6 : Fig.5 ~ 12. Qxb5 Rb8 13. Qa4 Bb6 14. Nbd2 Bb7 15. Ne4 Qf5 16. Bxd3 Qh5 まで)

 さー、進めてここだね。黒はキャスリングする一手も惜しんで、ポーン・サクリファイスでついでにバッテリーを消しながら遊んでいたルークの活用、さらにビショップ・ペアを建ててクイーンを活用、と忙しく攻めに来ているんだね!対して白のアンデルセンは流石歴戦の猛者というか、しっかり受けながらナイトを中央に使って、防戦一方にならない様バランスを取っているんだねー。ところで、穂乃香ちゃんやありすちゃんならこの黒の15手目を見てすかさず『手損』って言うと思うナ?なんでかって?えっへへ、内緒!ってそれほど大したことでもないから、考えてみてネ!

 この局面から、アンデルセンの不朽のコンビネーションが始まるよ!

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(Fig.7 : Fig.6 ~ 17. Nf6+!!)

 最初にこのゲームを文香さんに教えて貰ったとき、感激したナァ……文香さんも、「記憶を消して一つだけチェスゲームを並べられるとしたら、エヴァ―グリーン・ゲームを並べたい」って言ってたもんね!この手は確かにキングとクイーンにダブルアタックだけど、いきなりgファイルがセミオープンになって、黒から反撃がわかりきっているのに、って感じ!

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(Fig.8 : Fig.7 ~ 17. ... gf 18. ef Rg8 19. Rad1 Qxf3 まで)

 ひょええ、って感じになるよね!このナイトを取り込む19. ... Qxf3なんて次Qxg2#までの頭クイーン一手詰み!って!どうするんだろ……一緒にハラハラしてね!

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(Fig.9 : Fig.8 ~ 20. Rxe7+!!!)

 えぇ~!?

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

えぇ~?!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 うん、ありがと!そんな感じ!

 これ、受けないの!って思うよね?

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(Fig.10 : Fig.9 ~ 20. ... Nxe7 21. Qxd7+!!!! まで)

 クイーン、切っちゃうんだ……!

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(Fig.11 : Fig.10 ~ 21. ... Kxd7 22. Bf5+ まで)

 これ、ルークとビショップのダブルチェックだよ!こういう手は、片方を受けるだけじゃ受けにならないから、エンドゲームでは強いよね、合い駒を打って受けるのが利かないチェスだと尚更って印象だなー。

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(Fig.12 : Fig.11 ~ 22. ... Ke8 23. Bf7+ まで)

 落ちたキングをビショップで追って……

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(Fig.13 : Fig.12 ~ 23. ... Kf8 24. Bxe7#)

 最後はほとんどすべてのピースが利いて、作り上げたようなチェックメイト。溜め息が出ちゃうネ……。

 

 これは何度も並べて欲しいゲームだなぁ。ま、アタシは並べてみて「おおー」って言って欲しいゲームしか紹介してないんだけどネ!

 

 えーと、今日のメールは……「真夜中のパン屋さん」さんからだよ!ありがとう!

 

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こんにちは!いつも楽しく見ています!

柚ちゃんたちは最近よく事務所でもチェスセットを広げていますが、良かったらあたしにも教えてもらえませんか!お礼に柚ちゃんによく似たパンを持って行きますので!

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 ……事務所で言ってくれてもいいのにネ?

 

 最後に……今日紹介するのは、これ!

ーーチェスは神々のゲーム。無限の可能性がある。

 これは作家・ナボコフのコトバね。文香さんに貸してもらった本、面白かったナァ。

 ではでは、お体に気を付けて!喜多見柚でした♪

 

ヤーアットー ミツケテクレタネー キタミー♪ ……

 

(続く)

 

第4回 綾瀬穂乃香の早わかりチェス講座[オープン・ゲーム > ルイ・ロペス>モーフィー・ディフェンス>コロンブス・ヴァリエーション]

 こんばんは。綾瀬穂乃香です。

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 今日は、第4回目ですか。早いですねー……

 最初はフリスクのみなさんで、一巡すれば御の字かと思っていました。私たちの企画を通して、チェスを始めてみようと思ってくださった方や、奏さんの映画メモを入り口に、チェスを扱った創作に触れてみようとしてくださったという方々から反響をいただけるのは、うれしいことです。アイドル冥利につきますね。

 

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心が豊かになりますね。

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 ……?それはよくわかりませんね。暖かくは、なるかもしれませんが。 

 

 4回目の今日は、前回に引き続いてオープン・ゲームから、『ルイ・ロペス』というオープニングについて、一緒に学んでいきたいと思います。よろしくお願いします。

 

 まず、オープン・ゲームということで、1. e4 e5はいいですね?穂乃香とひとつずつ、復習していきましょう。

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(Figure.1 Open Game : 1. e4 e5 まで)

 ここから、2. Nf3と早速黒が突き出したeポーンに狙いをつけるのも、ジオッコ・ピアノと一緒ですね。当然、ナイトを活用しながら黒も2. ... Nc6と受けます。

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(Fig.2 : Fig.1 ~ 2. Nf3 Nc6 まで)

 ここで、イタリアン・ゲームのときは3. Bc4と出て、キングしか支えるピースのいないfポーンを狙いにいく展開になりましたね。 

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(cf. Fig.2.1 Italian Game : Fig.2 ~ 3. Bc4 まで)

 ここですね。前回の講座ではちらっと紹介しましたが、ここで3. Bb5、といきなりナイトを攻めにいくのが、今日ご紹介する『ルイ・ロペス』です。

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(Fig.3 Ruy Lopez : Fig.2 ~ 3. Bb5 まで)

 これは15世紀のスペインのカトリック司教でもあった偉大なチェスプレーヤー、ルイ・ロペス・デ・セグーラに因んで『ルイ・ロペス』と呼ばれている定跡ですね。彼がスペイン人であることから『スペイン定跡』などと呼ばれることもあります。センターにポーンを送り、ナイトで相手のセンターポーンを攻め、相手のナイトを攻めながらキャスリングの権利を手にする、と白はここに至るまでプラスの手しか指していないのが特徴で、21世紀の今でも最も多く指されているオープニングのひとつですね。ちなみに、ルイ・ロペスは何者かによる暗殺で生涯を終えています。

 

 ルイ・ロペスの分岐は早く、ここでもう黒にはいくつかの応手とそこから始まるバリエーションが用意されています。どんな手が思い浮かびますか?

 まず、(1)3. ... a6と突いてビショップを追い返そうとする手が見えますね。

 それから、ジオッコ・ピアノと同じ概念に基づく(2)3. ... Bc5も理に適っていますね。また、いきなりのエクスチェンジを誘って敢えて手抜いて(3)3. ... g6とフィアンケットを見せる指し方は、1957・1958と世界チャンピオンに輝いたワシリー・スミスロフが得意とした指し方だったといいます。

 他に、(4)3. ... Nd4と2手目に活用したナイトを更に使いながらイニシアチブを逆に握りに来る強い手がありますね。

 

 今日は、この中の(1)とそこから始まるバリエーションについて、一緒に見ていきましょう。

 まず基本図はこうですね。このa6の突き出しを持って、『モーフィー・ディフェンス』と呼ばれます。これは統計によると、ルイ・ロペスを受けた黒番の実に75%が3ムーブ目にa6と突くというデータもある、ルイ・ロペスの中で一番指されているバリエーションと言える形ですね。

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(Fig.4 Ruy Lopez, Morphy Defense : Fig.3 ~ 3. ... a6 まで)

 将棋の様に駒を打ち直して局面を作ることもできるボードゲームと違い、チェスではピースを打つという選択肢がプレーヤーは許されていません。そのため、将棋よりも『手得』や『手損』という言葉には敏感になってくださいね。今日の穂乃香とのお約束、ですよ。

 さて、『手損』という言葉に敏感になった皆さんなら、(Fig.4)のこの局面では、実質白に選択肢がふたつしかないのが、おわかりですね?そうです、例えば、4. Bc4とジオッコ・ピアノの位置に引いてくる様な手は、黒にa6を突かせた分手損、と今は考えるのです。

 なので、3ムーブ目にBb5と出なければ到達できなかった場所に引く4. Ba4か、いきなりナイトとエクスチェンジする4. Bxc6か、というところになります。ここで、「a6を突かせた手が白の手損より悪くなる」という様な構想で進められればBc4なんて手もアリになるのでしょうが……研究してみる価値はありそうですね。色んな鉱脈が眠っているかもしれません。

 現状では、この局面では4. Ba4が4. Bxc6の8倍くらい多く採用されていて、やはり白番が勝ちやすいのも4. Ba4のようですね。4. Bxc6の方がドロー率が先手勝率を上回っていて、白が不本意な展開になりやすいようですが、データと自分の好みも違いますしね。好きな方を使っていくのが一番だと、私は思いますよ。

 

 今日は1回分を使って、4. Ba4の先を、共に見ていきましょう。

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(Fig.5 Ruy Lopez, Morphy Defense, Columbus Variation : Fig.4 ~ 4. Ba4 まで)

 白が4ムーブ目にBa4とaファイルにビショップを引く手を、コロンブス・ヴァリエーションと言うのですが、私が調べた限り、日本語のサイトではヒットしませんでしたね。チェスでは最もメジャーな形のひとつだと思うのですが…….。一方ECOではここまででモーフィー・ディフェンス、としていますね。

 続きいきましょうか。この局面、黒を持って手の広い局面ですね。

 少し高等な考え方になりますが、白は4. Ba4を採用することで、序盤の白ビショップと黒ナイトのエクスチェンジを諦めた、と見ることも出来ます。なぜなら、已むに已まれず交換せざるを得ない局面になったとき、本当は白は4. Bxc6とaファイルに引くタイミングでエクスチェンジができたわけですよね。そうです、ここでも『手損』の考え方です。なので、黒としてはc6のナイトが質に入っている現状、Bxc6のエクスチェンジがマイナスにならないような陣形を組んでいく、というのがオープニング~ミドルゲームを視野に入れたストラテジーになりますね。チェスでは、短期的見通しを指すタクティクスに対比して特にストラテジー、と言ったときは長期的な作戦を指します。日本語の『大局観』に少し近いかもしれませんね。

 なので、スペース・アドバンテージを取りながら引いたビショップを虐めに行く4. ... b5なんて手はすぐ浮かびますか?

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(Fig.5.1 : 4. ... b5の変化)

 5. Bb3以外の手というのが指しにくいですね。これは例えば他にやるなら5. Nxe5や5. 0-0ですが、5. Nxc5 Nxc5 6. Bb3の展開含め、いずれにせよ序盤にしては白の駒損が大きく、無理してビハインドを背負いにいく意味も特にないと思いますね。

 以下は手番を握った黒から、bポーンを突いた手を活かしてのフィアンケットを組む5. ... Bb7や、ポーン・チェーンを作りながら白マスビショップを活用する5. ... d6、また落ち着いた局面でeポーンを睨みながらナイトを活用しようとする理に適った5. ... Nf6なんて手がありそうです。手番は白に渡りますが、白はキャスリングの権利を手にしていますし、f3に据え付けられたトロイの木馬が常に黒のeポーンを狙っていて、どちらも主張のある展開になりそうですね。

 

 ジオッコ・ピアノと同じく、一番弱い白ポーンを攻めに行きながらビショップを負けじと展開する4. ... Bc5はどうでしょうか。白からエクスチェンジがしにくい現局面を逆手に取り、ビショップを引かせたことに満足して戦線を別に拡大しに行く、というイタリア軍らしい手です。

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(Fig.5.2 : 4. ... Bc5の変化)

 30年ほど前は4.… Bc5と指すと5.0-0 Nf6 6.c3 Ba7以下、

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(Fig.5.2.1.1 : 5.0-0 Nf6 6.c3 Ba7)

7.d4 b5 8.Bb3 Qe7 9.Bd5 ed 10.Bg5 h6 11.Bxf6 Qxf6 12.e5で白が有利と言われていたようですが、

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(Fig.5.2.1.2 : 7.d4 b5 8.Bb3 Qe7 9.Bd5 ed 10.Bg5 h6 11.Bxf6 Qxf6 12.e5 まで)

6. ... Nxc4の取り込みからdポーンを敢えて白に突かせ、7. d4 ed 8. cd Bb6と局面を収めると白のポーン損で黒番としても不満ない展開、と今は見られていますね。

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(Fig.5.2.2 : 5.0-0 Nf6 6.c3 Nxc4 7. d4 ed 8. cd Bb6 まで)

次に9. Nc3からナイトをお互い交換しに行く展開になりそうです。しかし不満ないのはあくまでこの局面であって、4. ... Bc5は白番勝率が6割を超えているというデータもあるようです。

 

 いきなりナイトを跳ねる4. ... Nf6はどうでしょう。

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(Fig.5.3 : 4. ... Nf6の変化)

 これは浮いている白のeポーンを逆に狙ったナイトの跳躍です。ここでは、eポーンに紐付けに行く5. Qe2、5. d3と、eポーンを犠牲に先んじて陣形を整えようという5. 0-0が考えられます。eポーンを取られてポーン損では、と思いますが、5.0-0でキャスリングによって右のルークが使えるようになると、何かの拍子にRe1+とルークを使う手がチェックで入る可能性が出て来るんですね。キングを戦場から遠ざけながらルークで敵キングにプレッシャーを掛ける、これは白が手得を主張した感じでしょうか。

 5. Qe2アラピン・アタックと呼ばれる切り返しです。

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(Fig.5.3.1 Alapin Attack/Wormald Attack : 5. Qe2)

 この手はクイーンの可能性を狭めてしまう、として、これより最近若干ゃ多く指されているのが、5. d3の突き出しでしょうか。これはアンデルセン・ヴァリエーションと呼ばれて先手勝率の比較的高い形ですね。

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(Fig.5.3.2 Anderssen Variation : 5. d3)

 そして、5. 0-0 とした手に5. ... Nxe4とするのが、オープン・ヴァリエーションと呼ばれる形です。

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(Fig.5.4.1 Open Variation : 5. 0-0 Nxe4)

 以下は6. d4 b5がクラシカルな展開ですが、最近6. Re1と出て 6. ... Nc5とナイトを追う手も結構気になっていたりします。

 

 これまで私と一緒にオープニングをお勉強してきた方々は、もう薄々気が付いているんじゃないでしょうか。そうです、『オープン』という場合はだいたい『クローズド』が暗に対比されているんです!それが、4. ... Nf6 5. 0-05.  Be7と出るクローズド・ヴァリエーション、です。

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(Fig.5.4.1 Closed Defense : 5. 0-0 Be7)

 以下一例は6. Re1 b5 7. Bb3 d6 8. c3 0-0 9. h3、とかでしょうか。

 クローズドがこの変化では一番多いようですね。次いで5. 0-0 に5. ... b5とbポーンを突く手が多く、そのあとルイ・ロペス・オープンと僅差で続くようです。

 

 私が好きなのは4. ... Ngd7ですね。モダン・シュタイニッツ・ディフェンスと呼ばれる形で、母数は少ないですが、割合上は黒番勝率が白番勝率・ドロー率より高いんですよ。

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(Fig.5.5 Modern Steinitz Defense : 4. ... Nge7)

 白は以下c3~d4を狙ってくることが多いですね。黒番は曲線的な指し回しになることが多いので、私は好きですね。

 

 ルイ・ロペスは変化がとても多い戦型で、中でもこのa6を突く形は最も分岐が多いといわれています。しっかりと学んでいるかどうかが顕著に出る戦型ですね。古さという点では将棋でいうところの四間飛車のようなイメージがありますが、ルイ・ロペス・オープンなどを見ると駒損か手損か、と横歩取りのような感じもする、不思議な戦型です。

 

 最後にお便りを読みましょうか。今日は……「ぴにゃこら太・ギャンビット」さんからです。どんなオープニングなのでしょう……。

 

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最近、綾瀬さんの事務所にはとてもチェスが強い新人さんが入ったようですね。綾瀬さんから見て彼女はどうですか?

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 みなさん、お耳が早いですね。そうなんです!お父さんがロシア人のハーフだと聞きましたが、とても綺麗な銀髪に白い肌と、すごい美人な方なんですよ。なんでも、お父さんから手ほどきを受けたというチェスは相当強くて、あのフレデリカさんと4戦やって3勝1分けですからね。色んなことを教えて貰えたらなあ……って思ってます。まだお近づきにもなれてないのですけどね、えへへ。ロシアは世界一のチェス大国ですもんね。憧れます……

 

 ところで、ルイ・ロペスの時代ってみなさん想像がつきますか?彼が一流の理論家としてプレーヤーとして活躍していた時代、日本では織田信長が全盛期を極めていたんです。不思議な感じがしますねぇ……時代を超えて受け継がれるチェスの魂、のようなものを感じます。

 文香さんの受け売りになってしまいますが、シャーロック・ホームズの生みの親、アーサー・コナン・ドイルは、

――チェスに長けていることは戦略的精神の印だ。

 と言ったそうです。もし、織田信長がチェスに出逢っていたら、そしてハマっていたら、日本の歴史はもう少し変わっていたかもしれませんね。綾瀬穂乃香でした。

 

(続く)

 

第4回 桃井あずきのチェス・プロブレム大作戦!

 

 おは桃井~!みんな、桃井あずきだよーっ

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 今日は第4回目の『チェス・プロブレム大作戦』だね。宿題は解いて貰えたかなっ?

 

 前回の宿題の答え……と行く前に、まず問題を振り返ろっか!全部で3問あったよね!

 まず、

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 これ。次が、

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 これ。そして、最後に、

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これ。それぞれの問題について説明をするんじゃなくて、今日はこの流れを説明しようかなって思うんだ!

 

 解いてくれた人はもう気付いちゃった?全部#2、詰み手順は1. Bxf7+ Ke7 2. Nd5#までだよね!

 これはね、あずきが手抜きしたわけじゃないんだよ!ちゃんと、これをあずきのコーナーでみんなに説明しよう、って思った理由があるんだ!

 

 実はこのメイト、『レガルのメイト』って言われて、チェックメイトのテクニックを体系的に勉強できるようになっている本なんかでは絶対紹介されるレベルの頓死筋なんだよー。もう、言うなら升田式石田流の王手飛車の筋みたいな!

 

 このメイトが発見された流れを説明していくねーっ きっとこれを聞くと、黒のビショップがあんな変な位置にいた理由もわかるはず?!

 まずね、レガルっていうのは人の名前で、杏さんがこの前紹介してくれたフィリドールというプレーヤー、彼の師匠にあたる人なんだ!レガルがこうやって局面レベルでいろんな研究をしていたってことが、フィリドールに与えた影響って計り知れないんじゃないかな、ってあずきは思うの!

 

 まずね、レガルがこの手順を発見したとされているゲームを、あずきと一緒に並べてみよう!

 初手から、1. e4 e5 2. Nf3 d6 3. Bc4 Bg4だね。

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 白はわかりやすいね。これだけ見るとイタリアン・ゲームの陣形だよね!ナイトを使い、ビショップを展開、キャスリングを一目散に目指す、チェスのお手本みたいなオープニング!

 対して黒の3. Bg4は、ナイトをピンして白のクイーンをいきなり攻めに来た手だね。この手はあんまりいいとは言えないんだけど、どうしてかな?考えながら、あずきの話を聞いて欲しいなーって。

 続きは、4. Nc3 g6 5. Nxe5 Bxd1だよ!

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 シメシメとばかりにクイーンを素抜いて黒優勢?ううん、違うんだよーっ!って、この局面が、みんなに先週から考えて貰ってたプロブレムのひとつなんだ!見比べてみてねーっ

 あとはもうみんなと見た様に、6. Bxf7+ Ke7 7. Nd5#チェックメイト

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 これが『レガルのメイト』、誕生の瞬間、ってわけ!この前考えて貰った他の2つも、実は全部実戦進行からとったものなんだよ!200年以上前の、超古典的な頓死筋だけど、未だにこれに引っかかるアマチュアはいくらでもいる、そんなレベルのものを、みんなに知ってもらおうと思ったの!

 少し応用的なハナシをすると、キングがピンされている状態は絶対にピンだよね。前のピースが動いたら自殺手!対して、メジャーピースがピンされている状態ってピンだけど、前のピースが動けなくなったわけじゃないんだよ、ってことかな?参考になったらいいな♥

 

 これからは、普通のプロブレムの他に、こうやって有名なチェックメイトの手筋を説明するための問題も混ぜていこうかなって、あずき思うんだ!

 詰め将棋にも色んな形や手筋、技法があるよね!超有名な頭金だったり、下段に落とす手筋だとか金駒の打ち換え、もっと高度なのだと馬鋸、とか!終盤力はチェックメイトがどれだけ見えるかだと思うんだ!いっしょに頑張ろっ?

 

 今日の問題は、んー、4問、いや、やっぱり3問にしようか!

 まず、

(1). White to Move #2

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  それから、

(2). White to Move #3

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 最後がこれ!

(3). White to Move #10

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 じゃ、みんな、頑張ってねーっ

 

 今日のメールは……「南条P」さんからだよ!ありがとねーっ

 

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なんじょうくんはチェス強いですか?

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 うん?ウチの事務所の南条光ちゃんはチェスしないんじゃないかな……?

 って!なんじょう違いだよ~まったくもう!わかりづらいなぁ……

 

 ラスカーはね、

ーー最も勝つのが難しい試合とは、勝勢の試合を勝ちきることだ。

 って言ったんだって。

 木村義雄名人は、

ーー勝ち将棋を勝て。

 って言ったっていうよね!

 勝勢になったときこそ、最後まで機械の様に正確に勝ち切ること。これがきっと一番大事なことなんだね!

 また会いましょ、桃井あずきでした♥

 

(続く)

 

 

幕間:ダークイルミネイトが見様見真似でチェスをするのを暖かく見守るだけの時間

 

バターン

神崎蘭子「闇に~飲まれよっ!!(おっつかれさまでーす!)」

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二宮飛鳥「あぁ、お疲れさま……。ふぅ、ボクらは輝いていたかな、おっと、聞くまでもないか」

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蘭子「盟約はこれにて終焉を迎えたはずだが……?(今日のお仕事はこれでおしまいだよね?)」

 

飛鳥「あぁ、予定通りなら、この雑誌の取材で今日は終了だ」

 

蘭子「命の雫が!(汗かいちゃった……)」

 

飛鳥「今日はもう帰るのかい?もう少しゆっくりしていこうじゃないか……」

 

飛鳥「ちょうど、そこに面白そうなモノがあることだし、さ。ボクらを新しいセカイへと誘ってくれる盤上遊戯がね」

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蘭子「これは……古の合戦図!(これは、チェスだね!)」

 

飛鳥「プロデューサーが戻ってくるまで、優雅にチェスと洒落こもうじゃないか」

 

蘭子「我、まだ彼の者たちを我が手に収めること能わず……(私、よくルールを知らないんだけど……)」

 

飛鳥「物事を理解しきることなんて、往々にしてできないのさ。それでも理解したい、違うかい?つまりだ、このチェスという盤上遊戯は、またの名を西洋将棋というわけだ。ということは、将棋のようなものに違いない……そうは思わないかい?」

 

蘭子「我が友、褒めて遣わす!(飛鳥ちゃん、頭いいです~)」

 

飛鳥「フッ、こんなもの、ただ観察しただけさ……」

 

蘭子「戦いの火蓋を落とすのは何方?(順番はどうしようか)」

 

飛鳥「将棋は振り駒で始めるじゃないか。ボクらはそれに従うべきさ」

 

飛鳥「そう、さしずめ、……『振りピース』だ」

 

蘭子「我、黒がいい(われ、くろがいい)」

 

飛鳥「そうか、漆黒は君の白い肌によく映える……そしてボクは白か。何物にも染まり、何物にも染まらぬ……」

 

蘭子「レギオンは幾人か(ポーンは何個振るのー?)」

 

飛鳥「分け隔てなく、愛を注ぐのが、偶像たるボクらの使命さ」

(白のポーンを全部手に取る)

 

飛鳥「なかなかつかみどころの難しい形をしているな……」

(振って、盤上にポーンを転がす)

 

飛鳥「……」ゴクリ

 

蘭子「……」ゴクリ

 

飛鳥「……しょ、将棋では、振り駒をして歩兵のままの駒が多ければ、振った方の手番で対局が始まる」

 

蘭子「此度の卜占の帰結は如何……?(じゃあ、この場合は……?)」

 

飛鳥「ポーンは、クイーンになるそうだ。つまり、振ったポーンはすべてポーンのままというこの事象、ボクの先手、ということなのだろう」

 

蘭子「むぅ」

 

飛鳥「では、始めようか。フフ、お洒落。……将棋では初手は飛車先の歩をついて交換するのが妙手とされている、と聞いたことがある。そして、チェスではポーンは1マス、または2マス動けるらしい」スッ

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飛鳥「フッ、人類を手こずらせ続けてきた遊戯も、しょせんボクにかかれば即座に最善解が導かれてしまう……」

 

蘭子「翼を広げ、飛び立つわ!(じゃあビショップつかおーっと)」スッ

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飛鳥「ほほう、ではこれはどうかな?」スッ

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蘭子「なんと俊足のレギオン!(うー、ポーンが速いです……)」

 

蘭子「……!」ピリピリーン

 

蘭子「ハーッハッハ!和の国の合戦では、レギオンは目前の敵を蹴散らすと聞く!(将棋では歩兵は前の駒を取るんだよね!)」スッ

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 飛鳥「なるほど……そうだった。では、キミの答えはそれかい?」スッ スッ

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蘭子「な、なんと!傀儡の術だと!(瞬間移動!?)」アセアセ

 

飛鳥「チェスには、ルークとキングの位置が入れ替わる、キャスリングというものがあると聞き及んだことがあってね。これでボクのキングは攻めにくかろう」フッ

 

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速水奏「ねぇwwあの子たちはいったい何のゲームをやっているのかしらww」

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宮本フレデリカ「ンフフッwwwフレちゃんも混ざりたいwww」

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奏「ダメよww今あなたをあそこに投げ込んだら、何故だか一生後悔する気がするわww」

 

フレデリカ「今度からアタシたちも振りピースで先後決めようかwww」

 

奏「『むぅ……』ってww蘭子ちゃんも気づきなさいよww」

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蘭子「……!」ハッ

 

蘭子「ハーッハッハッハ!チャリオットとプリーストを極めし者、それがエンプレス!(クイーンはルークとビショップの動きが出来る駒だったよね!)」スッ

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飛鳥「参ったな……キミも、ギフテッドということなのかい?」

 

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フレデリカ「ちょwwwそっちはwww」

 

奏「クイーンじゃない方でしょww」

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飛鳥「してこの二宮飛鳥、タダでやられると思わない方がいい……!」スッ

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蘭子「こ、これは……!」

 

蘭子「レギオンの支持を受けしエンプレス!!(ポーンで支えておこうかな!)」スッ

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奏「打ったwwピースを打ったww」ブフォ

 

フレデリカ「色違うのにwww」ブフォ

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飛鳥「なるほど、その手があったか!!」

 

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奏「そんな手があってたまるかww」

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飛鳥「……どうやら、キミの観ているセカイ、ボクの観ているセカイとは異なるようだ……」

 

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フレデリカ「アタシたちはwww何を観せられているのwww」

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飛鳥「しかし、白のポーンは依然ボクの支配下にあるのではないかな?」スッ スッ

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蘭子「あぁ!」

 

蘭子「……!」ピリピリーン

 

蘭子「許されざる邂逅、共に居られぬ二人……(二歩……)」

 

飛鳥「なっ!!ボ、ボクとしたことが……」

 

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奏「もうムリwwお腹痛いww」

 

フレデリカ「あの二人にwwwちゃんとチェスを教えてあげようwww」

 

 

(続かない)